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生まれか育ちか?|「やわらかな遺伝子」本のまとめ

2020-04-07

遺伝か育ちかについて良い示唆を与えてくれる本。

遺伝vs育ち

この本で述べられている主な議論は、人間の本性は先天的なのか、または学習で身につくのか?という点である。

遺伝子は確実に動物の成長・進化に影響しているが、どの遺伝が発現するのかという点に関しては、経験の影響が入り込む余地もある。そして「育ち」が「生まれ」を通じて威力を発揮することはある。

そもそも本能の定義とは?

本能による行動と学習による行動の境界はとても曖昧。これまで人類学者は、「生まれ」を重視する人々は人間の類似性に注目し、「育ち」を重視する人は差異性に注目している。

類似性を見る

例えば類似性としては以下の例を挙げている。

  • 世界のどこの人間も同じように笑ったりしかめ面を見せたりすると言う事実
  • 男女のパートナーの好みとして、男女共に、知的で頼り甲斐があり、協力的で信頼でき、誠実なパートナーを求める
  • 男は「美しさと外見」、女は「相手の社会的、経済的地位」を求めるというアプローチの男女差も世界共通

性差はいつ、どのようにできるのか?

性差は進化と適応の産物なのか、はたまた先天的なものなのか。それはどのように、どんな影響で生じるのだろうか。

ケンブリッジ大学によると、生後12ヶ月の赤ん坊が母親の顔を見る回数を男女で比較すると、女児が遥かに男児より多く母親と目を見合わせた。また、アスペルガー症候群は他人に共感をもてないが、物理的なことにとても強い興味を持つ。

平均して、男は女よりも「日常の物理」に関心があり、女は男よりも「日常の心理」に関心があるというのは、何らかの形で最初から存在する傾向らしい。

こういった話は、本能の存在を明らかにする。

環境が遺伝に作用する

また、遺伝と環境は相互作用している点もある。IQの遺伝性に関しては、社会経済的な地位に大きく関係している事実がある。

年収4万ドルと40万ドルではさほどIQに差がなかったが、年収数千ドルの非常に貧しい家庭の子供たちと年収4万ドルで比較すると、はっきりとした違いが出た。環境が遺伝子に影響を及ぼす場合もある。

学習もある程度本能の要素が入っている

人間の脳は、石器時代に、自分の生死に重要な意味を持った恐怖を学習するように予め配線されている。だからクモや暗闇や高所、雷などを怖がる。そして遺伝子によって、このような情報が現在の脳のデザインに伝わる。遺伝子は過去の世界に関わる事実を収集し、自然選択を通じて、未来の好適なデザインに生かしている。

そして学習は、それ自体が本能である。

文化と脳の進化

脳の進化は、文化が発達し、文字や様々な新しい事柄に対応するために進化していったのではなく、進化していく文化に対応していくだけの脳力をすでに人類は進化させていたという。脳のもつ知能、想像力、共感力、洞察力は文化の助けを借りず、必然の結果として生まれた。

様々な議論により、後期旧石器時代の革命に始まる文化の進化によってヒトの精神が変化したわけではないと言う結論に至っている。文化によって人間の脳は進化したのではなく、人間の脳が進化するにつれて、文化が進歩していったと捉える。

しかし遺伝子の中には、過去の情報を現代に運ぶ役割を果たすだけでなく、現在の環境の情報を吸収する役目も持つ。

そもそも遺伝子とは一体何なのか?

本書で言う遺伝子の役割、意味は7つある

  • 何世代も渡って生き残ろうとする
  • 膨大な年月の適応進化によって得た知恵が保存されている
  • RNAを介したタンパク質の生成、レシピの役割
  • 個体発生のスイッチ
  • 健康な成長をもたらす
  • 同じ種や別の種で様々な個体発生のプログラムにおいて利用される
  • 環境から情報を引き出す装置

とくに本書で強調しているのは、7つ目の「環境から情報を引き出す装置」だ。遺伝子のオンオフによって人間の特徴は変わるが、このオンオフは多くの場合、体外の事象に直接または間接的に反応して変化している。遺伝子は経験のメカニズムである。

生まれと育ちから学ぶいくつかの教訓例

仲間:

個性は、わずかな素質を欲求で強化することによって生み出されたものである。

多くの人間は、自分の仲間内のルールに従って動くが、その中で、個人の差別化を測ろうとする。その中で、その集団と比較して自分の得意なこと、苦手なことが見えてくる。本来、才能の遺伝的な差異はごくわずかだが、自分が仲間より何かが得意だときづくと、その何かに対する欲求が激しくなる。仲間内で何らかのスペシャリストとしての自分の地位を切り開くとさらに欲求が激しくなる。こうして「育ち」は「生まれ」を強化する。

実力社会:

公平な社会では「生まれ」が強調され、不公平な社会では「育ち」が強調される

美しさを例に見ると、顔立ちや体系などはおもに遺伝性で、美は「生まれ」だ。だが、食事や日々の運動、清潔さなども身体的な魅力に影響を及ぼす。お金があれば、醜い人でも「育ち」の面で魅力的になれる。また、生まれが綺麗でも、生活習慣が悪ければ醜くなる。だから「生まれ」と「育ち」は相互にリンクする。

社会が平等になって、誰もが同じ食や教育などを受けれるようになると、先天的な部分がより大事になってくる。しかし社会が不平等で食べ物が得られないとかになってくると、健康の状態に差が生まれ、差が出るから「育ち」が強調される。

これは、学歴、就職の面でも同じことが言える。

個性:

個性も生まれと育ちが相互にリンクしている。

子供が暴力的になるためには、虐待を受けただけでは不十分で、特定の遺伝子を持っていなければならない。また、特定の遺伝子を持つだけでは不十分で、虐待も受けなければならない。

合わせて読むと面白そうな本

天才!成功する人々の法則 マルコム・グラッドウェル著

こちらも生まれか育ちかと言う観点に焦点を絞って、なぜ成功者は大きな成功を治めることができたのかというポイントをまとめている。自分の才能を生かしつつどう努力していくかという点で、良い示唆を与えてくれるかもしれない。

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