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快感、快楽の仕組みとその未来 | 人間は何を求めて生きるのか

快感は人間の行動のモチベーションだ。人間は快感を求めて行動する。

その仕組みはいったいどうなっているのだろう?快感を客観的に知ることで、自分の行動を見直すきっかけになったり、他者の行動にもっと共感することができるのかもしれない。

また快感が今より簡単に手に入る未来になったら世界はどう変化していくだろうか?

デイヴィッド・J・リンデン著『快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか』(原題:The Compass of Pleasure) では、快感の仕組みについて生物学的な観点で紹介している。快感の仕組みを知りたい人にはおすすめ。最終章の快感の未来については、人間の生きる意味に関して、考えさせられる。

人間と快感の複雑な関係

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人間と快感の関係はとても複雑だ。人間は何か行動を起こす時、快感が動機付けになる。人間が学習するときも、快楽が中心的な役割を果たす。

そもそも、人類が次世代に遺伝子を残すために、食事をし、セックスをする必要があるが、食事やセックスを快楽だと感じさせなければ、好んで行動しないだろう。遺伝子を残すため、人間の体は食事やセックスを快楽と感じられるように設計された。

反対に、歴史的には、快楽のコントロールをするために様々な試みが行われてきた。法律、宗教、教育制度などで規制や慣習を作り、人間は快楽をコントロールしようと試みた。

人類の生存に不可欠でもあり、コントロールすべきでもある快感だが、快感はどこからくるのだろう?

快楽の生物学的レベルの研究

Photo by Robina Weermeijer on Unsplash

本書では、人間の快楽の神経信号を生み出す脳領域である内側前脳快楽回路など、快楽の元になる身体の機能について述べている。食欲、性欲、ギャンブル、薬、これら快楽が生じる行動は、内側前脳快楽回路の活性化に関連している。

面白いことに、慈善活動などの行動も、ヘロインやオーガズムや脂肪たっぷりの食品によって働く快感回路と同じ神経回路が活性化されるという。社会的に是認された行動であれ、認められていない行動であれ、活性化される場所は一緒なのだ。

この快楽は、人為的に操作することもできる。電極やある種の向精神薬でドーパミン快感回路を活性化することで、意図的に快楽を送ることもできる。しかしこうした激しい快楽は、依存症を引き起こす元にもなってしまうのだ。

依存性の高い薬物などは、自然に出る報酬以上に快感回路を活性化させ、その快感を記憶に根付かせるように脳を変えさせることで、その人がまた薬を欲するような行動を起こさせてしまう。

社会的な要素も快楽になる

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人は社会的な要素によっても快楽を得る。

本書によると、人は経済的判断をする際は、他者との比較が重要な働きをしているという。例えば金銭的報酬であれば、人は、自分が受け取る金額の絶対量ではなく、相対的に比較して、自分が多くもらってるかもらってないかによって、快感回路の活動が変わる。

また、人間は情報を得ること自体からも快楽を得ている。ニュースやゴシップなどの噂話はもちろん、自分の未来についての情報を得ることでも快楽を得る。

快感を変容させる人間の能力

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人間は、「何に快感を感じるか」ということを変容することもできる。

経験によって快感回路を長期的に変化させることで、人間は様々な物事を報酬と感じることができる。通常快感は食事や、水や、セックスなど、遺伝子を次世代に広げるために不可欠なことを快感に感じるように作られる。

しかし人間の観念は、人間の基本的な欲求とぶつかり合うことさえある。宗教的な原理を大事にするために、性的な活動を抑えたり、ハンガーストライキなどで食欲を抑えたりする。基本的な欲求を抑えてまで、自己が信じる観念から快感を得ようとしているのだ。

快感の未来

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快感の未来はどのようになるのだろうか。

未来学者であるレイ・カーツワイルの予測では、2030年後半には、日常的に脳を分子単位でスキャンし、自分の精神プロセスをコンピューターにアップロードしていると言う。精神プロセスが機械の中に入れば、知覚や精神的機能は全てソフトウエアのようになる。気分を明るくしたり、最高のオーガズムを経験したい時は、アプリを使えばできるようになる。

もしニューロンの操作が未来に可能になったらどうなるだろうか。脳内のニューロンを組み合わせ、様々な快感を得ることができる。ヘロインによる感覚、オーガズムに関連する感覚を引き出すことができる。こういった快楽の感覚をつなぎ合わせたり、組み合わせたりすることもできるかもしれない。すると、未来には快楽レシピのようなものもできているかもしれない。

未来の快感に関する社会環境はどうなるだろう。テクノロジーを取り巻く社会的、法的、経済的システムを想像するのはとても難しい。他の薬やアルコールと同じように、禁止されたり、課税されたり、規制されるかもしれない。

最後は本書はビッグクエスチョンで締め括られる。それは快感がもし簡単に手に入ったとしたら、人間が生きる目的はなおも存在するのだろうか。快感がありふれたものになった時、人間は何を欲するのだろうか。


人間は何のために生きるのだろう。人生で得られる快感が大きければ大きいほどそれは素晴らしい人生だと言えるのだろうか。もし全ての快感が内側前脳快楽回路の活性化度合いから数値化できるのだとすれば、快感ランキングの順位が高い行為をずっと行っていれば最高の人生になるのだろうか。

また、快感が行動のモチベーションだとするならば、快感がテクノロジーによって簡単に手に入ってしまったら、全ての行動のモチベーションはなくなってしまうのだろうか。そうなったときに人間が生きる意味は...?

人生の意義や人間の尊厳に関しても色々考えさせられる良書。

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