フリースキー・フリーライド・フリースタイルスキーとは:多様化するスキースタイルの特徴と歴史を紐解く

スキーも近年多様化し、様々なスキーの楽しみ方が増えている。フリースキーやフリーライドスキーはまさにその典型だといえるが、もっと自由に楽しみたいという気持ちから生まれた、フリースキー・フリーライドスキーとはなにか。


フリースタイルスキーとは


フリースタイルスキーとはアクロバティックな技やジャンプを通して競い合う種類のスキーだ。FISの競技と種目としては、スキークロス、モーグル、エアリアル、スロープスタイル、ハーフパイプがあげられる。


フリースタイルスキーの歴史

Freestyle skiing 101: Origins and Olympic historyによると、最初に発展を見せたのはフリースタイルスキーだという。フリースタイルスキーの起源は1930年代まで遡り、1970年代になると、様々なアクロバティックなスキーが登場。ホットドッグ大会(hot dog competition)と呼ばれる大きなモーグルの丘を滑り降りる大会が行われたり、スキー・バレエと呼ばれるスキースタイルも登場する。また同時期には、スキーでもジャンプからの倒立宙返りの技が注目されるようになり、「エアリアル・アクロバット」と呼ばれる大会が開催されるようになる。


フリースキーとは:フリースタイルスキーvsフリースキー


フリースキーは、先ほど「フリースタイルスキー」で紹介した通り、トリックやジャンプで競い合う種類のスキーであり、オリンピックスポーツ組織であるU.S. Ski & Snowboardから「フリースキー」の紹介を見てみると、スロープスタイルや、ハーフパイプ、ビッグジャンプなどが含まれる。競技という視点からみると「フリースキー」はフリースタイルスキーよりも狭義の意味で使われている。実際の競技の映像はXgameなどの映像から見ることができる。


競技としてのフリースキー



しかし歴史上を考えると、フリースキーは競技以外でルールを超えて「より自由に滑る」というコンセプトで使われたのが原点だった。例えば街中の手すりや構造物など、ありとあらゆるところをポイントにして滑るストリートスキーはその代表例だろう。自由にカッコよく滑れるか・自分なりのスタイルを作れるか、という所に重点を置くカルチャーが根強い。

ストリートでのシーン


フリースキーの歴史 : どのように「フリースキー」は生まれたのか?

どのように「自由に滑る」コンセプトであるフリースキーは生まれたのだろうか?

Freestyle skiing 101: Origins and Olympic historyによると、「フリースキー」が誕生したのは、1990年代だという。1979年にFISが「フリースタイルスキー」を正式なスポーツとして認めたことで、モーグルやエアリアルなど、「フリースタイルスキー」はルールがどんどん厳格になっていった。正式なスポーツになったことで結果、選手の安全性を高めるために挑戦できる技が制限されるようにもなる。例えばモーグルでのバックフリップの禁止やパークやパイプ競技の禁止などが当時はあった。(1) ルールが厳格になるにつれ、多くのスキーヤーは、スキーというスポーツにおいて創造性や進歩性を失っているのではないかと疑問を抱くようになっていった。

ちょうど同時期、スノーボードの世界でもフリースタイル革命が起こり、多くのリゾート地ではハーフパイプやテレインパークが設置されていたが、それらの利用はスノーボーダーに限られていた。(2) ここにFIS に不満を抱いていたスキーヤーの派閥が、スノーボーダーのようにパークに入り、ジャンプなど自由なスキーを展開するようになる。(1)また、ツインチップスキー(スキーの両端が反り上がっており、後ろ向きでも着地したり滑りやすいスキー)も発明されたことで、フリースキーの認知度が高まっていった。(2)こうしてニュースクールムーブメント(ニュースクール=新しい一派)が誕生する。Newschool skiingというと従来の枠にとらわれないスキーという意味でFreeskiingに繋がることが多い。

2002年に設立され、フリースキーの分野を切り開いた草分け的存在の一つとして知られるフリースキーブランド、「ARMADA 」はウェブサイトで端的に表現している。


In the early 2000’s, a new generation of skiers were rethinking the sport. Drawing influence from skateboarding, surfing and snowboarding, they were building a culture of creativity and imagination in a sport and industry still rooted in alpine racing. Five skiers, JP Auclair, Tanner Hall, JF Cusson, Julien Regnier and Boyd Easley—the original AR5—teamed up with photographer Chris O’Connell and videographer Eric Iberg to chart a new path and create a brand that embodied the revolution taking place. Armada was born.

ARMADA - THIA IS ARMADA (2023年5月時点)
翻訳より:2000年代初頭、新しい世代のスキーヤーたちが、このスポーツを再考していました。スケートボード、サーフィン、スノーボードから影響を受けた彼らは、アルペンレースに根ざしたスポーツと産業に、創造性と想像力の文化を築き上げようとしていました。JP Auclair、Tanner Hall、JF Cusson、Julien Regnier、Boyd Easleyの5人のスキーヤーが、写真家のChris O'Connell、ビデオカメラマンのEric Ibergとともに、新しい道を切り開き、この革命を体現するブランドを作り上げるためにAR5を設立しました。そして生まれたのがArmadaです。


こうした流れから、現在よく知られる多くのフリースキーブランドは同時期に設立された。


フリースタイル、フリーライドに特化したスキー板のおすすめブランド7選

ここでは、フリースキー・フリーライドスキーに特化したブランドをお伝えする。 他にも従来のアルペンスキー・レーシングスキーブランドが出しているフリースキーも多数あるので、その紹介はまた別の機会にしたい。 1.ARMADA ...

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新しい・枠にとらわれない、という意味では競技になる前のモーグルやエアリアル、バレエスキー、スキーボードも枠にとらわれない「フリースキー・ニュースクールスキー」の一種だったと言えるのかもしれない。こうしたフリースキーの50年の進化はRedbullのムービーから見ることができる。



フリーライドスキーとは:フリースキーvsフリースタイルスキー


フリーライドスキーも非圧雪な場所や色々な地形などどこでも滑り、またはジャンプなどトリックなどかけ、とにかく型にはまらないスキースタイルで、形にハマらない、自由に滑るという意味合いが強い。しかしフリースキーとフリーライドスキーの違いを挙げるなら、フリースキーはパーク・ハーフパイプなど人の手によって作られた「人工物」に対してジャンプやトリックをかけるというスタイルに対して、フリーライドスキーはあくまで人の手がかかっていない自然地形に対して型にはまらず滑る、という意味で使われることが多い。

同じ意味で、フリースタイルスキーも人の手がかかったコース内で遊ぶという意味では、フリーライドスキーとは違いのでるスキーのスタイルではある。


フリーライドスキーの歴史

スキーはもともと移動として使われはじめ、軍隊や探検の実用的な道具として使われていたということを考えると、ありのままの自然の中を探検する、という意味では本質的に同じなのだろう。


スキーの歴史 : スキーの起源から日本にスキーが広まるまでを紐解く

スキーの歴史は雪の上の移動のためというシンプルな目的から始まり、現在ではスポーツやレジャーとして様々な側面を持つに至った。スキーの歴史から、これまで変化してきたスキーの世界やあり方を読み解く。

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また山岳文化としてアルピニズムが広がり、登山家があらゆる山を踏破しようとしたのと同じ様に、どんな過激な斜面も滑走してしまおうという猛者が出たのも自然なことなのかもしれない。

フリーライドスキーの起源を調べた時、1930 年代と 1940 年代にはエミール・アレのようなプロスキーヤーがフランス・シャモニー周辺の急激な下り坂を攻め、アメリカでも 1970 年代ほとんどのプロがスキーレーサーになることを目指すかプロモーグルツアーで回るというキャリアを送る中、過酷な斜面で芸術的なフリーライディング表現を行なうスキーヤーが出始めたことがわかる。(3)1988 年に AAHHH のムービーなど、エクストリームなスキーのコミュニティが成長する中で、初のビッグ マウンテンフリーライドコンペティションというアイデアも生まれる。(3)



こうして「 the 1st World Extreme Ski Championships」が1991 年にアラスカ州バルディーズで開かれる。(3)翌 1992 年には、コロラド州でのビッグ マウンテン フリーライド大会が開催される。(3)スイスのVerbierでも開かれるようになり、こうした大会が一つのツアー「Frreeride world tour」に繋がっていく。


競技としてのフリーライドスキー:Freeride world tour

フリーライドスキーとは?


競技としてのフリーライドスキーとして、Freeride World Tourという世界戦がある。日本でも、長野県の白馬がこの世界の戦いの一舞台となっている。


1996年にスイスで始まったFreeride World Tour(FWT)は、自然のままの地形を滑り、そのテクニックやスタイルを競う“フリーライド”の世界一を決めるツアー。

FREERIDE WORLD TOUR JAPAN


また、決められていないコースをいかに選び、自分のスタイルにあった滑りができるかも採点基準になる。フリーライドワールドツアーに関して、もう少し詳しく、下記にまとめた。


フリーライドスキー・スノーボードコンテストの最高峰、フリーライドワールドツアー(FWT / Freeride World Tour)とは

近年バックカントリーや非圧雪の滑走が人気になり、「フリーライドスキー」と呼ばれる自由なスキースタイルが確立されてきているが、FWTはそんなフリーライドカルチャーの形成に大きく影響を与えている。

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(1)https://en-academic.com/dic.nsf/enwiki/1267465
(2)https://web.archive.org/web/20171107031709/http://www.nbcolympics.com/news/freestyle-skiing-101-origins-and-olympic-history
(3)https://snowbrains.com/world-ski-snowboard-tours-explained-freeride-world-tou1r/

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