周囲の人間関係が自分に与える影響 |「つながり 社会的ネットワークの驚くべき力」本のまとめ

人間は、自分の行動が自分の人生を形作ると強く思っている。

しかし、この本は、周囲の人間関係のネットワークがいかに自分の人生に強く影響を与えているかを教えてくれる。

ネットワークはどのような影響を及ぼすのかを理解していると、自分の人生をもっとコントロールできるように役立てられるかもしれない。


社会的ネットワークの驚くべき力


本書は、収入、結婚相手、さらに自分がどんな病気にかかるかなど、日々の生活の多くの部分が、周りとのネットワークによって左右されると述べる。

また自分の選択、行動、考え方、感情にも変化を及ぼす。

こうした影響は知っている人だけではなく、知り合いの知り合いが引き起こした連鎖反応によって、影響されるものもあるという。

社会的ネットワークがなぜ存在し、どう機能するかを理解するには、いくつかのルールがある。

本書では五点、社会的ネットワークのルールについて述べている。

  1. 私たちはネットワークを形作る
  2. ネットワークは私たちを形作る
  3. 友人は私たちに影響を及ぼす
  4. 友人の友人の友人が私たちに影響を及ぼす
  5. ネットワークはそれ自身の命を持っている


1.私たちはネットワークを形作る

人間は、自分の興味や経歴、夢を共有する人々を探し出す。「類は友を呼ぶ」という諺は本当に起きている。

そしてその中の繋がりで、ネットワークの構造も作り出している。

  1. 自分が何人と付き合うか(どれだけ友人を作る?)
  2. 友人や家族同士の交流の深さ(全ての友人が互いに知り合えるように会を開く?開かない?)
  3. 社会的ネットワークの中で自分がどこまで中心的な存在となるか

こうした選択によっても、ネットワークの形は驚くほど変わる。


2.ネットワークは私たちを形作る

今いるネットワークで、自分がどんな位置にいるかによって、大きく影響を受ける


3.友人は私たちに影響を及ぼす

人間は相互に影響を与え合い、真似し合う。これは人間の傾向である。


4.友人の友人の友人が私たちに影響を及ぼす

人は、友人の友人の友人をも真似る。すなわち、直接のつながりを持たない人の行動や思考も真似る可能性はある。


5. ネットワークはそれ自身の命を持っている

ネットワークには創発性がある。

ケーキのスポンジは単に小麦粉と卵の中間の味がするのではなく、もっとおいしい。

混ざることでその材料の味の単なる合計を超えるように、ネットワークも、つながることでその部分の合計よりも大きなことが起こりうる。

個人の行動や成果が、実は社会的ネットワークの影響を大きく受けているとするならば、人々は自分自身の選択を完全にはコントロールできていない。


感情の伝染


他者から影響を受ける要因として、感情がある。

感情を外に出すことで、その感情は他の人にも伝染する。元気のない人と一緒にいると、その人もどんどん元気がなくなっていく。

しかしなぜそのようなことが起こるのか?感情は自分の内側だけで感じるだけではダメなのだろうか?なぜ人間は感情を表にも出すのだろうか。

本書によると、原始人が集団社会を作り出したという面で、進化的な側面として、感情が表に出るメカニズムが発達したという。

コミュニケーションで最もわかりやすいのは言語だが、感情の表出、他人の感情の読み取りもできるようになることで、個人間の絆を結びやすくし、行動を一致させ、情報を伝えやすくなった。


パートナーとの出会い


恋人、結婚相手、どのようなパートナーと共に時間を過ごすかは、人生の幸福度に大きく左右されるのは間違いない。

そして、社会的ネットワークはここでも甚大な影響力を持っている。

本書の調査では、調査対象の約68%が、知り合いの紹介で、配偶者に巡り合っている。

また、知人を介した紹介ではなく、見知らぬもの同士の出会いさえ、共通の関心、趣味などが関わる。

つまり社会的な事前選択のプロセスが働いているので、偶然出会ったと思い込んだ相手も実は最初からふるいにかけられている。


社会ネットワークの中で比較する

人間は自分の絶対的な立場よりも、相対的な立場を気にする場合が多いと本書ではいう。

相対的立場の基準になるのが、今自分が所属してる社会的ネットワークだ。

例えば下記の選択肢があったとする。

  1. 自分の肉体的魅力度は6で、他の人は平均して4
  2. 自分の肉体的魅力度は8で、他の人は平均して10

全体で75%の調査対象者が、1番を選んだという。

こうした結果から、周囲の人はパートナーやパートナーに関する情報を与えると共に、最大のライバルでもあると結論づける。

社会的ネットワークは、誰と出会うかを決め、パートナーの好みを左右し、他人からどのようにみられ、どんな競争上の強みや弱みを持っているかを明らかにするのが、役割だと結論する。


ネットワークを見て魅力を確認する

女性が男性に対する魅力を判断するとき、男性が社会的ネットワークのどの位置にいるかは重要な判断材料になる。

遺伝的な要素(容姿、スポーツ能力)などは自分で見ればわかるが、繁殖のパートナーとしてふさわしいか(育児能力)見たときには、見た目だけでは評価は難しい。

こういったことから、社会的ネットワークは人間関係に二つの面で影響を及ぼしていると本書はいう。

  1. 社会的ネットワークはどんな構造で、その中でどの位置にいるのかによって、他人からみた自分の魅力度は影響を受ける
  2. 社会的ネットワークが一定の認識を広め、魅力に対する姿勢を変化させる


ネットワークによって伝染するもの


ネットワークによって様々なものが伝染していく。

社会的ネットワークによって、情報、感染症、肥満、さらには自殺まで広まっていくという。

そして、ネットワークの中心に位置する人が、つながりの終焉にいる人たちよりその恩恵や被害を受けやすい。

ネットワークによって、「認識」も変わる。例えば肥満の例で言うと、周りが太り始めると、「太り過ぎ」の基準が変わっていく。

この何が適切かの基準が変わっていくことで、自分の行動も変わっていく。

こうして周りの行動の模倣に加え、ネットワーク内での基準が変わっていくことで、結果的に自分の生活にも変化が及ぶ。


弱い繋がりの価値

人間は結束の固い集団を作る傾向があるが、本書の調査によると、かつての旧友など、弱い繋がりが、重要な情報(転職の情報など)の橋渡しをしてくれるという。

弱い繋がりは新しい情報の宝庫であり、弱いつながりをたくさん持っている人は、情報を与える代わりに、アドバイスやチャンスをもらえる場合が多い。

集団と集団の橋渡しをする人は、ネットワーク全体で中心的な位置を占めるようになり、見返りを得る可能性が大きい。

この流れはテクノロジーの変化でますます大きくなっているという。

こうしてお金持ちはより多くの友人を引きつけ、友人が増えればお金を儲けるチャンスがどんどん増える。


繋がりを作るために進化する人間


人間の協力と利他精神には一つの謎がある。

原始時代、食べ物を分ければ、友人の環境の適応性は高まるが、自分はその分食べ物が減るので、生き残る可能性が減る。

するとそういった協力精神は生まれないはずなのに、なぜ今も人間は協力するのか?

本書では、周囲の人々の欲求、つまり「自分のつながりのある他人の欲するものを欲する欲求」がネットワークで増殖し、これによって行動を選択する上で他人を考慮する選択が生まれるのではと述べている。

人間には基本的な欲求(食欲、睡眠欲、性欲)に加えて、他人に影響される恣意的欲求もある。(音楽の好みなど)

また長年の進化的淘汰によって、複雑さをます社会環境に適応するため、人間の脳は認知能力を高めるよう進化していった。


まとめ

人間は、自分の行動が自分の人生を形作ると強く思っている。しかし実際は、社会的ネットワークによって、強く自分の思考、感情、行動は影響を受けている。

結婚相手、収入、ネットワークから見た自分の魅力、自分の人生を左右する大きな要因の多くがネットワークから大きく影響を受ける。

また、ネットワークによって、相手の思考、行動はもちろん、伝染病、肥満、生活習慣、自殺にいたるまで、様々なものが遺伝する。

そしてこの遺伝は自分の直接の繋がりではなく、友人の友人など、自分の間接的なつながりから来ることもある。

こういった様々なメカニズムを知ることで、ネットワークをうまく活用していくことが大事。


人間が常に満たされながら生きるためには、常に意義あるつながりを作る能力を持つことが大事だと、ウェルビーイングの定義である。

どのようにネットワークは自分に影響を与えるのか、またどのような構造のネットワークにいて、どの位置に自分はいるべきなのかを客観的に考えると、より良い人間関係が築けるはずだ。

時には、少し差別的な表現になってしまうが、付き合う人を選ぶということも大切になってくるのかもしれない。

人間関係について再考できる良い本なので、興味ある方は是非。

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