建蔽率と容積率とは:都市空間を形づくる基礎知識


都市の景観や建物の形状は、決して偶然に決まるものではない。その背後には「建ぺい率」や「容積率」という数値が存在する。これらは土地や不動産を購入する際にも頻繁に登場する言葉であり、個人が建築物を計画する際の制約となるだけでなく、都市の空間構成や景観にも深く影響を与えている。この二つの重要な概念について掘り下げていく。


「建蔽率」とは

建蔽率とは、「敷地面積に対する建築面積の割合」を指す。たとえば建ぺい率が50%であれば、土地の半分を建物が占めることができるという意味になる。これは景観の維持や、建物が近すぎることによる延焼を防止することを目的にして設けられている制限でもあり、建ぺい率は街づくりのためのルールだ。



建蔽率の計算方法

建ぺい率は「建築面積 ÷ 土地面積 × 100」で求めることができる。具体例を出すなら、「建築面積50㎡」で「敷地面積100㎡」なら「50÷100×100 = 50%」なので建蔽率50%という数字が出るし、「建築面積80㎡」で「敷地面積100㎡」なら「80÷100×100 = 80%」なので建蔽率80%という数字が出る。



容積率とは:都市の縦空間に影響する数値

容積率は土地面積に対する建物の延べ床面積の比率である。建ぺい率が「平面」での制限なら、容積率は「立体」での制約だ。この数値により都市の高さと密度が決まる。



容積率の計算方法

容積率は「延べ床面積 ÷ 土地面積 × 100」という計算式で成り立つ。たとえば「敷地面積100㎡」の土地に「延床面積150㎡」の建物なら、容積率は150%になる。建蔽率の「建築面積」と違い、階数が増えるほど「延床面積」は増えていくので、容積率の数字は100%を超えることがあるのも容積率の特徴だ。



建ぺい率と容積率はなぜ必要なのか

建蔽率や容積率はなんのために必要なのか、それは住環境の質や街の景観、さらには災害時のリスクを軽減するためであり、都市が人にとって安全で、魅力的な空間であり続けるためには、こうした規則はとても重要であることがわかる。

建ぺい率:

  • 火災の延焼を防ぐため:建物同士の距離を確保し、延焼リスクを低減する。
  • 通風や日当たりの確保:風通しや日当たりを確保して快適な住環境を守る。
  • 景観の美しさ:無秩序な建設を抑え、街並みに統一感と美しさを保つ。

容積率:

  • 地域の過密化を防ぐ:無計画な人口集中を防ぎ、都市機能を健全に保つ。
  • 採光・日照・通風・開放感:良好な環境を整えるために、建物の密度に限りを設ける。
  • 公共施設との均衡:道路や下水道といった公共施設に負担をかけすぎないよう調整する。


建蔽率は誰が決めるのか

ではこの建蔽率は誰が決めるのか?建蔽率の数値は「用途地域」で規定され、その地域ごとに建蔽率のルールが異なるのだが、建蔽率のルールについては建築基準法第53条に示されており、建築基準法を含む法律は国権の最高機関であり、立法機関である国会で制定される。

ではこの用途地域のエリア決め自体は誰が定めるかというと、地方公共団体が都市計画で定めることとなっている。広域的な視点から決めるべき市街化区域の区分や、都市開発方針などは都道府県知事が、用途地域や地区計画など具体的な土地の使い方などは市町村の長が決定する。


市町村の建蔽率と容積率はどこで確認できるか?

建ぺい率や容積率など用途地域に関することは、市区町村役場の「都市計画課」が担当となっている。またウェブサイトで建蔽率などが記載された「都市計画図」を閲覧できる自治体も増えてきた。以下は長野県軽井沢町がウェブサイト上で公開している都市計画図になる。用途地域区分が色で分けられ、それぞれのエリアごとに容積率と建蔽率の数値の確認ができる。


軽井沢町の都市計画図(https://www.town.karuizawa.lg.jp/pdf-data/toshikeikaku.pdf


建蔽率・容積率はいつから始まったのか

大澤 (2011)によれば、1919(大正8)年4月4日、現在の建築基準法の前身となる市街地建築物法と都市計画法が制定され、建築物に対する制限は市街地建築物法が担っており、高さ制限と建蔽率制限の組み合わせによって、建物容量のコントロールが行われていた。高さ制限や建蔽率制限の内容を定めた施行令は、翌 1920(大正9)年9月 29日に公布されている。

また容積率規制に関しては、1961(昭和 36)年の「特定街区制度」の創設をもって容積制の導入とみなしており、「建築物の容量と都市施設とのバランスの確保」を目的とした容積率制限は、特定街区制度においてはじめて実現したことによると書かれている。


参照:
大澤 昭彦 (2011) 日本における容積率制度の制定経緯に関する考察(その1) -容積制導入以前における容量制限:1919 年~1950 年- 土地総合研究2011年冬号
国土交通省 - 建築関係法の概要
iemiru - 「建ぺい率」や「容積率」って何のためにあるの? 計算方法などについてわかりやすく解説
建築再構企画 - 建築基準法と安全条例・建築基準条例の違いとは?
suumo - 市街化区域とは?市街化調整区域とはどう違う?家や土地を買う際に知っておきたいことを解説


関連記事

関連トピック

#    #    #    #