都市計画とは:都市課題への包括的アプローチ

都市計画とは、都市の成長に伴う多様な課題――交通渋滞、住宅不足、環境汚染、災害リスク――に対処するための包括的なフレームワークであり、無秩序な開発を抑制し、持続可能で快適な生活空間を実現する役割を担っている。また、土地や物件の購入や建築を考えるうえでも、その仕組みを理解することは欠かせない。本記事では、都市計画の基礎からその重要性までを詳しく解説していく。


都市計画とは

都市計画については、都市計画法に次のように定められている。


第四条 この法律において「都市計画」とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画で、次章の規定に従い定められたものをいう

都市計画法第4条1項


都市計画法に定められている通り、「都市計画」の目的は都市計画の健全な発展のための計画になる。


都市計画はなぜ必要なのか?

都市計画の存在理由は、単なるインフラ整備にとどまらない。都市が成長し、人口が増加する中で生じる数々の問題――交通渋滞、住宅不足、環境汚染、災害リスク――これらに体系的に対処し、持続可能かつ快適な生活空間を提供することこそが都市計画の役割になる。適切な都市計画が施されなければ、街は無秩序に発展し、複合的なリスクが社会全体に波及する。

例えば、道路が狭小であれば、火災や地震の際に延焼リスクが高まり、避難の遅延も招きかねない。また、乱立するマンションは日照やプライバシーを侵害し、調和の取れた街並みを損ねる。さらに、街の規模に対して道路網が不十分であれば、渋滞や緊急時の避難が滞るリスクもある。

工業地と住宅地が隣接するケースでは、住環境が脅かされると同時に、工業活動の利便性も低下する危険がある。また、山の斜面に住宅が建てられれば、土砂災害のリスクが高まり、自然景観も崩れる可能性がある。農地が無秩序に開発されることも、持続可能な農業環境を損なう一因となりかねない。このように、都市計画は社会全体のリスクを軽減し、人々が安心して暮らせる都市づくりにおいて不可欠な要素なのだ。


都市計画の法律の根拠となる「都市計画法」


それでは、都市計画を実現するための根幹を成す「都市計画法」がどのように位置付けられているのかを見ていこう。都市計画法は、国土利用計画法第9条に基づく土地利用基本計画において、各都道府県の区域を対象とし、5つの地域区分(都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域、自然保全地域)のうち「都市地域」に関して適用される法律である。


国土交通省 - 「都市計画制度の概要 - 都市計画法制」より引用


まずは、都市計画法による範囲内にあたる区域を「都市計画区域」として設定する。



そして、さらに都市計画区域を細かく分けていくと、「区域区分」や「地域地区」、「都市施設・市街地開発事業」、「地区計画」と分けることができ、それぞれで定められている制限によって、街の発展や整備に制限をかけた都市計画法が制定されていくことになる。


都市計画法制「3. 都市参照:都市計画法制「3.都市計画制度の構造②」(国土交通省 都市局 都市計画課令和6年3月更新)の図を使用し筆者作成


ちなみに都市計画区域内と区域外で人口の偏りを見てみると、国土面積の約3割ほどである「都市計画区域内」に日本の総人口の約9割が居住していることがデータでわかる。


令和5年都市計画現況調査」「全国都道府県市町村別面積調」「総務省統計人口推計データ」をもとに作成


都市計画は誰が定めるのか?

都市計画は主に地方自治体や都道府県、国の各レベルで策定される。例えば上記の5つの区分から決定者を整理すると以下のようになる。

  • 都市計画区域:都道府県知事が決定(都道府県をまたいで都市計画を作るときは国土交通大臣が決定)
  • 区域区分:「都市計画区域」と同じく都道府県知事または国土交通大臣が決定
  • 地域地区:市町村が決定
  • 地区計画:市町村が決定


都市計画の歴史

都市計画の歴史をひも解くと、日本の近代都市計画は1888年に制定された「東京市区改正条例」に端を発する。この条例は、封建都市としての江戸を近代都市「東京」へと変革するべく、最低限の基盤整備を定めたものであり、適用範囲も東京に限定されていた。その後、明治維新以降の急速な近代化に伴い、全国の都市で市街地の計画的な形成が求められるようになる。この必要性に応える形で1919年に都市計画法および市街地建築物法(旧法)が制定されることとなる。

戦後、日本は経済成長と共に、都市が抱える問題にも直面する。住宅不足、郊外の無秩序な開発、住環境の悪化――これらの問題は、戦前に定められた1919年の法制度ではもはや対応しきれない規模へと膨らんでいた。爆発的な人口増加とともに都市の課題は深刻さを増し、抜本的な制度改革が必要とされた。こうして1968年に新たな都市計画法(新法)が施行され、都市計画は新たな時代の要請に応えるものとして生まれ変わった。この新法は、無秩序な開発を抑制して都市住民の生活環境を保全し、都市が抱える課題に対応する包括的なフレームワークを提供するものとなった。


参照:
名護市都市計画マスタープラン - Vol.1 都市計画ってなに?
LIFULL HOME'S PRESS - 意外と知られていない都市計画と人生設計との関わり
公益社団法人 日本都市計画学会 - 都市計画とは・都市計画の制度体系
国土交通省 都市計画制度の概要


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