公衆サウナからモッキ(mökki)まで〜本場フィンランドのサウナカルチャーに浸る:フィンランド旅②

フィンランドにおいて外せないのがサウナ。本場フィンランドでのサウナカルチャーを体験した。

凍った海の近くでサウナ後に涼む。夏はサウナ後に海で泳げそうだ。

今回の旅の目的の一つであるサウナ。フィンランドでは、人口550万人に対して330万ものサウナが存在し(1)、サウナはまさに日常生活の一部だ。フィンランドにおいてこれほど浸透しているサウナとはどのようなものなのか。

サウナの歴史は古い。「至福の北欧サウナー知られざる歴史と文化のすべて」という本では、「サウナ」という言葉は元々フィンランド語及びサーミ語の「くぼ地(sakna)」つまり古代から人々を寒さや危険から守る避難所を意味する言葉に由来し、現代においては日常生活や仕事、ストレスから解放される隠れ家でもあると紹介されている。スウェーデンやフィンランドで3世紀のサウナの遺跡が見つかっており、7世紀には「スモークサウナ」と呼ばれる方式の浴場が登場し、フィンランドで発掘された最も古いサウナは13世紀のものになる。サウナはフィンランドの文化に深く根ざし、「サウナ外交」として政治上の重要な場面でも用いられ、文学や神話、伝説にも登場する重要な文化的要素でもあるそうだ。

そんな歴史あるサウナ文化があるフィンランドで、訪れたサウナはフィンランドのヘルシンキにある歴史ある公衆サウナ「Kotiharjun Sauna」だ。「Kotiharjun Sauna」は1928年に開業し、ヘルシンキで最も古い公衆サウナとして知られる。開始時間の14時前に着くと、すでに先着で並んでいる人々。ガウンを着てヴィヒタを持って並ぶ姿はこの地ならではの風景だなとワクワクする。


最も古い公衆サウナとして知られる「Kotiharjun Sauna」


受付を済ませ、ロッカーにはいるとそこには古き良き時代の面影が漂っている。年季の入った木製のロッカーが並び、サウナの歴史を感じさせる。新聞を読んだり、会話を楽しむ人々の姿があった。


使い込まれた感があるロッカー


サウナの内部に入ると、コの字型に配置された席が目に入る。コンクリート?石造りの腰掛けられる階段のようになっていて、足を踏み入れると熱を感じ、歩くのも一苦労だ。一番上の段にはスノコが敷かれている。自分で好きな場所に座れるように小さなスノコ置き場も用意されている。常連と思われる人はサンダルを持参してきていたが、私ともう1人の観光客らしき人は裸足で暑そうに歩いていて2人で顔を合わせて苦笑いしたのを覚えている。

常連さんは一番熱い場所をすでによく知っているようで、隅っこで集まりながら和気藹々と話していた。サウナ場で連呼されるフィンランド語で「はい」を意味する「ヨー」という声。そしてこのサウナ場のルールなのだろうか、サウナから出る時はみんながロウリュをしてさっそうと出ていく。

サウナからでてシャワールームで涼んでいると、「外でも涼めるぞ」と1人の男性が親切に教えてくれた。みんなサウナに出た後は玄関にある冷蔵庫から自分の水やアルコールを持ってタオル一枚で外に出ていき、ビール片手に語り始める。外では女性も普通にまじって会話をしている。街中で見る湯気もうもうの人々の姿はフィンランド独特の風景だ。サウナはフィンランド人にとって大切なコミュニケーションの場なのだということを改めて実感する。


受付近くにある冷蔵庫。サウナからでた後はこの中に冷やしてある水やアルコールがかかせない。



私もその中に混じって外で涼み、サウナを楽しみ終了。実はこの後ロッカーに時計を忘れ、帰りの空港に着く頃に気がつくのだが、メッセンジャーでメッセージするとオーナーが快く時計を送ることに対応してくれた。とても親切でありがたい。

別の公共サウナ「SAUNA UUSI」にも挑戦。こちらは先ほどの歴史あるサウナとは対照的に2018年にオープンした新しいサウナだ。ここではサウナとバーが併設されており、お酒を楽しみながらサウナを満喫できる。男女混浴の場所では水着着用、男女別の場所では裸というルールがあり、男女一緒でも楽しい時間を過ごしせるような設計になっている。

みんなサウナから出ると、サウナガウンをきたりタオルを腰にまき、ビールを片手に語り、少し飲むとまたサウナに入っていく。驚きだ。日本ではよく飲酒した後のサウナはしないよう注意書きが書かれているが、日本人とフィンランド人では身体の作りが違うのか、こういう店が開かれていること自体にとても驚く。何となく背徳感を感じながらも周りと同じようにサウナに入って一杯いただく。


2018年にオープンした「SAUNA UUSI」




もう一つ公共サウナ以外とは別の楽しみ方として、一棟貸しの別荘に付いているサウナも試してみた。フィンランドでは「モッキ(mökki)」と呼ばれるコテージを持っている人が多く、主に夏にモッキに滞在して湖で泳いだり、サウナに入ったり、BBQを楽しんだりするそうだ。「VISIT FINLAND」ではコテージ、サウナ、湖は「三種の神器」と紹介しているほど。海の近くというロケーション、必要最小限のスペース、バーベキューグリル、サウナ、自然に身を置いて豊かな時間を過ごすには素晴らしい場所であった。



今回滞在したモッキも海の近くにあり、夏はサウナの後に海に飛びこむこともできそうな場所だった。3月でも寒中水泳のように氷を割って泳げるのでは?と期待したが、今回は思いの外氷が厚くて断念。



海でスケートで渡っていく団体も発見。広々とした凍った海の上を滑っていく。気持ちよさそう..!



早速モッキの中にあるサウナにも挑戦。薪で焚くタイプで、自分で火をつけるところから始める。最初は煙突の空気孔の蓋のようなものを開けるのを忘れて煙が充満し、火災報知機が鳴るなどのハプニングも起きたが、火を用意するところから始めるのは良い経験だ。

プライベートサウナでは公共サウナとは違った楽しみ方ができる。自分の良いタイミングでロウリュができるタイミング、ぱちぱちと薪が炊かれる音、サウナ空間の静けさ、これはまた公共サウナとは異なる楽しみ方でもある。サウナの後は凍った海を眺めながら涼む。






BBQコンロも完備されており、海を見ながら美味しいものが食べれるのはとても素晴らしい。スーパーから買ってきたのは来る前に事前に調べたフィンランドの定番と呼ばれるサーモンやレンズ豆のスープ、ディル、マスタードなど。食材を買い込んでサウナでのんびりしながらこもれるというのはとても気分がいい。




寒中水泳を楽しむことはできなかったが、湖畔での静かなひとときは忘れられない思い出となった。翌朝はちょうど朝日の出も見ることができた。時間が経つごとに変化していく凍った海の色がとてつもなく美しい。






公共サウナでの静寂なひとときやコミュニケーションの場としてのサウナの重要性、そしてプライベートサウナでの贅沢な時間。それぞれの場所で異なる魅力があり、フィンランドのサウナが持つ多様性と豊かさを改めて感じさせられる体験だった。


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