雪板で里山へ:見慣れた場所が遊び場に変わる時

雪板がなんでもない地形を最高の遊び場に変えてくれた。

私が初めて「雪板」という言葉に触れたのは2021年の冬、もうすぐ年が明ける頃だっただろうか。その日は新潟県十日町市の中の移住者交流会のような会の集まりがあり、同じ集落から参加した嶋村さんから雪板について教えてもらったことがきっかけだった。私も湯沢出身でスノースポーツには小さい頃から触れてきたつもりであったが、この時の雪板の話は私の心に深く残ったのを今でも覚えている。

結局その時に雪板を経験してみよう話で盛り上がり、後日興味を持ったメンバーが集まって嶋村さんの案内のもと、裏庭で雪板を体験した。そこで味わったのは浮遊感やスキーやスノーボードのように簡単には曲がれないあの独特の感覚。ちょっとした地形が最高の遊び場に突如として変わった。ここでスキーやスノーボードとは異なる楽しみ方を知り、雪板という道具がもたらす新しい遊びの世界に魅了された。スキーやスノーボードの楽しみ方とは一味違う地形での楽しみ方、事前に地形をチェックして想像力を膨らませる滑りの快感。

それ以来、様々な雪板イベントに顔を出してみたり、当時長岡市中心に活動していた雪板ブランド「8blanks」さんのもとで自分の雪板も作らせていただいたりもした。イベントでは色々な形の雪板が貸し出されていて色々試せたし、スケートパークのような地形が人工的に作られていた。これまで知らなかった新しいスタイルの遊びに触れ、その奥深さに驚かされた。世代も大人から子供まで幅広くわいわい楽しんでいたのが印象的だった。雪板を実際に作るという経験も斬新だった。これまでスキーを自分で作る経験はなかったので、どのような形で削るのか、コーティングに何を塗るのか、裏はどのような形にシェイプしていくのか、一個一個学びつつどのような滑りができるのか想像が膨らんでいった感覚も覚えている。


長岡市の小国森林公園にて。「8blanks」の雪板ワークショップ。板を切るところから裏面のシェイプまで手どり足取り教えてもらった。



こうして雪板で遊ぶ経験が増えていくと、自然と自分の周りの環境に対する見方が変わっていった。黒倉集落を見渡せば、色々な所に棚田によってできた地形の数々。雪板で楽しめそうなスポットが広がっていた。スキーでは物足りなそうな斜面だが、雪板なら絶対最高だ。そういえば飲み会でも嶋村さんから「バックカントリーならぬ里山カントリーができそうだな!」と言われたのを思い出した。これは探検するしかない。

こうして私は雪板で集落を探索することにした。せっかくなので雪上キャンプの一泊二日で。集落の了解も得て棚田へと向かうと、そこには手付かずの雪板の遊び場が広がっていた。

真ん中にテントを設営し、あとは面白そうな地形に向かってひたすら登って滑る。とてもシンプル。時には思ったよりスピードが出なかったり思い通りにいかないこともある。しかしそれも楽しみのうち。面白そうなところはどんどん突き進んで滑り倒していった。




ある程度滑り降りていくと、「大地の芸術祭 2022」の作品「パレス黒倉」の家に到着。「この棚田はここに繋がっていたのか!」と土地の理解が深まっていく感覚。





後日、集落に戻り雪板の体験を共有すると、集落の人も物珍しそうに話を聞いてくれた。その周辺の土地の思い出を語ってくれたり。この近くは川があるから気をつけて!と心配してくれる声もあった。こうした話も雪板だったからこそできたことだろう。面白い遊びに出会えたことに本当に感謝している。


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