スキーも近年多様化し、様々なスキーの楽しみ方や競技種目も多様化してきた。フリースキー、フリースタイルスキー、フリーライドスキーはまさにその典型だといえるがこれらの違いはなんだろう?
大まかな区分け
大まかにフリースタイルスキー、フリースキー、フリーライドスキーを区分けしてみると以下のように整理できると考えている。ベースにあるのはスキーを自由に楽しみたいというカルチャーであるが歴史的に異なる使われ方がされている
- フリーライドスキー:人の手がかかっていない自然地形に対して型にはまらず滑る
- フリースタイルスキー:様々なアクロバティックなスキーの総称。「競技」という側面で言えばモーグル、エアリアル、スキークロスなど、スキー競技の伝統的なアルペンやノルディックとは異なる新しいカテゴリーをさす。(フリースキーのハーフパイプやスロープスタイルも含まれる)歴史的にはホットドッグ大会(hot dog competition)と呼ばれる大きなモーグルの丘を滑り降りる大会が行われたり、スキー・バレエと呼ばれるスキースタイルも含む
- フリースキー:「競技」としてはスロープスタイル、ハーフパイプ、ビッグエアなどを指すが、広義の意味ではニュースクールムーブメントから生まれた「自己表現・スタイル」のための言葉でもある。
フリースタイルスキー・フリースキーとは
ここから詳細を見ていく。フリースタイルスキーとは様々なアクロバティックなスキーの総称。「競技」という側面で言えばモーグル、エアリアル、スキークロスなど、スキー競技の伝統的なアルペンやノルディックとは異なる新しいカテゴリーをさす。(フリースキーのハーフパイプやスロープスタイルも含まれる)歴史的にはホットドッグ大会(hot dog competition)と呼ばれる大きなモーグルの丘を滑り降りる大会が行われたり、スキー・バレエと呼ばれるスキースタイルも含む。
フリースキーは狭義と広義の意味がある。「競技」としての視点から見てみるとフリースキーはトリックやジャンプで競い合う種類のスキーであり、オリンピックスポーツ組織であるU.S. Ski & Snowboardから「フリースキー」の紹介を見てみると、スロープスタイルや、ハーフパイプ、ビッグジャンプなどが含まれる。実際の競技の映像はXgameなどの映像から見ることができる。
しかし歴史を考えてみると、フリースキーは競技以外でルールを超えて「より自由に滑る」というコンセプトで使われたのが原点だった。フリースキーには競技にはない「自己表現」がとても大切になる。これはスノーボードのカルチャーとも通じている。街中の手すりや構造物など、ありとあらゆるところをポイントにして滑るストリートスキーはその代表例の一つだろう。自由にカッコよく滑れるか・自分なりのスタイルを作れるか、という所に重点を置くカルチャーが根強い。
フリースタイルスキー・フリースキーの歴史
Freestyle skiing 101: Origins and Olympic historyによると、最初に発展を見せたのはフリースタイルスキーだという。フリースタイルスキーの起源は1930年代まで遡り、1970年代になると、様々なアクロバティックなスキーが登場。ホットドッグ大会(hot dog competition)と呼ばれる大きなモーグルの丘を滑り降りる大会が行われたり、スキー・バレエと呼ばれるスキースタイルも登場する。また同時期には、スキーでもジャンプからの倒立宙返りの技が注目されるようになり、「エアリアル・アクロバット」と呼ばれる大会が開催されるようになる。
一方「フリースキー」が誕生したのは、1990年代。1979年にFISが「フリースタイルスキー」を正式なスポーツとして認めたことで、モーグルやエアリアルなど、「フリースタイルスキー」はルールがどんどん厳格になっていった。正式なスポーツになったことで結果、選手の安全性を高めるために挑戦できる技が制限されるようにもなる。例えばモーグルでのバックフリップの禁止やパークやパイプ競技の禁止などが当時はあった。(1) ルールが厳格になるにつれ、多くのスキーヤーは、スキーというスポーツにおいて創造性や進歩性を失っているのではないかと疑問を抱くようになっていった。
ちょうど同時期、スノーボードの世界でもフリースタイル革命が起こっていた。1990年代の初頭、音楽、ダンス、ファッションなどの分野で「ニュースクールムーブメント」が起こり、スノーボードも例外ではなかった。スノーボードにおいては個人のスタイルやファッションもより重視され、このムーブメントが単なる競技としてのスノーボードから一歩進んで、個性やライフスタイルを表現する手段へとスノーボードのあり方を押し上げた。またスケートの文化を引き継ぐスノーボードの影響により、スキーリゾートにもハーフパイプやテレインパークが設置されていった。(スノーボードの歴史より)
しかしこうしたパークやハーフパイプの利用はスノーボーダーに限られていた。(2) ここにFIS に不満を抱いていたスキーヤーの派閥が、スノーボーダーのようにパークに入り、ジャンプなど自由なスキーを展開するようになる。(1)また、ツインチップスキー(スキーの両端が反り上がっており、後ろ向きでも着地したり滑りやすいスキー)も発明されたことで、「フリースキー」の認知度が高まっていった。(2)2002年に設立され、フリースキーの分野を切り開いた草分け的存在の一つとして知られるフリースキーブランド、「ARMADA 」はウェブサイトで端的に表現している。
In the early 2000’s, a new generation of skiers were rethinking the sport. Drawing influence from skateboarding, surfing and snowboarding, they were building a culture of creativity and imagination in a sport and industry still rooted in alpine racing. Five skiers, JP Auclair, Tanner Hall, JF Cusson, Julien Regnier and Boyd Easley—the original AR5—teamed up with photographer Chris O’Connell and videographer Eric Iberg to chart a new path and create a brand that embodied the revolution taking place. Armada was born.
翻訳:
ARMADA - THIA IS ARMADA (2023年5月時点)
2000年代初頭、新たな世代のスキーヤーたちが、スキーというスポーツの再考を始めていた。スケートボード、サーフィン、そしてスノーボードからインスパイアを受け、彼らはアルパインレースに根ざしたこのスポーツと業界において、創造性と想像力の文化を築こうとしていた。JP・オクレール、タナー・ホール、JF・キュッソン、ジュリアン・レニエ、ボイド・イーズリー、通称「オリジナルAR5」の五人は、写真家クリス・オコネルとビデオグラファーエリック・アイバーグと手を組み、新たな道を切り開き、進行中の革命を体現するブランドを創造した。こうして、アルマダは誕生した。
新しい・枠にとらわれない、という意味では競技になる前のモーグルやエアリアル、バレエスキー、スキーボードも枠にとらわれない「フリースキー・ニュースクールスキー」の一種だったと言えるのかもしれない。こうしたフリースキーの50年の進化はRedbullのムービーから見ることができる。
フリーライドスキーとは:フリースキーvsフリースタイルスキー
フリーライドスキーも非圧雪な場所や色々な地形などどこでも滑り、またはジャンプなどトリックなどかけ、とにかく型にはまらないスキースタイルで、形にハマらない、自由に滑るという意味合いが強い。しかしフリースタイルスキーとフリーライドスキーの違いを挙げるなら、フリースタイルスキーはパーク・ハーフパイプなど人の手によって作られた「人工物」に対してジャンプやトリックをかけるというスタイルに対して、フリーライドスキーはあくまで人の手がかかっていない自然地形に対して型にはまらず滑る、という意味で使われることが多い。
同じ意味で、フリースタイルスキーも人の手がかかったコース内で遊ぶという意味では、フリーライドスキーとは違いのでるスキーのスタイルではある。
フリーライドスキーの歴史
スキーはもともと移動として使われはじめ、軍隊や探検の実用的な道具として使われていたということを考えると、ありのままの自然の中を探検する、という意味では本質的に同じなのだろう。また山岳文化としてアルピニズムが広がり、登山家があらゆる山を踏破しようとしたのと同じ様に、どんな過激な斜面も滑走してしまおうという猛者が出たのも自然なことなのかもしれない。
*スキーの歴史 : スキーの起源から日本にスキーが広まるまでを紐解く
フリーライドスキーの起源を調べた時、1930 年代と 1940 年代にはエミール・アレのようなプロスキーヤーがフランス・シャモニー周辺の急激な下り坂を攻め、アメリカでも 1970 年代ほとんどのプロがスキーレーサーになることを目指すかプロモーグルツアーで回るというキャリアを送る中、過酷な斜面で芸術的なフリーライディング表現を行なうスキーヤーが出始めたことがわかる。(3)1988 年に AAHHH のムービーなど、エクストリームなスキーのコミュニティが成長する中で、初のビッグ マウンテンフリーライドコンペティションというアイデアも生まれる。(3)
こうして「 the 1st World Extreme Ski Championships」が1991 年にアラスカ州バルディーズで開かれる。(3)翌 1992 年には、コロラド州でのビッグ マウンテン フリーライド大会が開催される。(3)スイスのVerbierでも開かれるようになり、こうした大会が一つのツアー「Frreeride world tour」に繋がっていく。
*フリーライドスキー・スノーボードコンテストの最高峰、フリーライドワールドツアー(FWT / Freeride World Tour)とは
(1)https://en-academic.com/dic.nsf/enwiki/1267465 (2)https://web.archive.org/web/20171107031709/http://www.nbcolympics.com/news/freestyle-skiing-101-origins-and-olympic-history (3)https://snowbrains.com/world-ski-snowboard-tours-explained-freeride-world-tou1r/