イタリア発・スローフード運動の祭典 ”Terra Madre Salone Del Gusto 2022”参加レポート

スローフード運動をご存知だろうか。イタリア発祥で全世界に広がっている食の社会運動だ。9/22 -26にはスローフードの国際的な祭典、Terra Madre Salone del Gusto2022(以下:テッラ・マードレ) がイタリア・トリノで開催された。

大変幸運であったが私が地域おこし協力隊として所属している新潟県十日町市松之山で山塩を作る「まつのやま塩倉」(以下:塩倉) がテッラ・マードレへの参加資格を与えられ、塩倉メンバーの1人である本間志朗さんから参加のお誘いをいただいたため、塩倉のサポートと雪国文化の発信も含めて参加させていただくことになった。今後の食のあり方について世界規模で考える、テッラ・マードレに参加した体験レポートをお届けする。


まつのやま塩倉 
日本三大薬湯のひとつに数えられる、松之山温泉の源泉である1200万年前の太古の海水から「薬湯山塩」を作る。新潟県十日町市松之山を拠点とする。 
WEB : https://www.mother-siokura.com/


スローフード運動とは

そもそもスローフード運動とはなんなのだろう。日本スローフード協会ではスローフード運動を以下のように書いている。


スローフードとは、私たちの食とそれを取り巻くシステムをより良いものにするための世界的な草の根運動です。郷土に根付いた農産物や文化を失うことを始め、ファストライフ・ファストフードの台頭、食への関心の薄れを憂い、1989 年にイタリアで始まり、現在160カ国以上に広まっており、国際組織でもあります。

スローフードとは - Slow Food Nippon


スローフードは地域の食文化を楽しむ草の根運動として始まり、1980年代のイタリアが発祥。ローマのスペイン広場にマクドナルドが開店し、食のグローバル化によってイタリアにファストフード文化が流入してくることに対して危機感を感じ、地域食や伝統食材など、食文化を守るために「ファストフード」とは逆の「スローフード」運動が始まったとされている。「おいしい、きれい、ただしい(Good, Clean, Fair)食べ物をすべての人が享受できるように」をスローガンに、現在では各国で様々な取り組みが行われている。


会場にある様々なプログラム

そんな世界中で活動が広まるスローフード協会による国際的な祭典がテッラ・マードレだ。今回は30カ国から3,000人以上の代表団が集まり、35万人が来場した。


公式サイトより (https://2022.terramadresalonedelgusto.com/)


Slow food Nipponによれば、テッラ・マードレ(Terra Madre)はイタリア語で「母なる大地」という意味で、世界中から食の生産者、学者、活動家が集まり、”食”についてさまざまなテーマで会議する、いわば「世界生産者会議」という意味を持ち、サローネ・デル・グスト(Salone del Gusto)は、「味の見本市」と訳される。その名前の通り、会場には様々な出店ブースやワークショップ会場があり、イタリアの地域毎に出店しているブース、ストリートフードやクラフトビールが集まるエリア、各国のスローフード団体が集まって出店しているエリアなど様々なエリアがある。


Terra Madre公式サイトのマップより


インターナショナルブースエリア

スローフードの団体は世界中に存在するが、今回のテッラ・マードレには30カ国から3,000人以上の代表団が集まり、それぞれのブースを展開した。この中の一つとして日本のブースも出店された。ここでは各国の特色あふれる食が提供され、それぞれの国の食について接点を持つことができた。


Slowfood Kärnten [ケルンテン:オーストリア共和国の連邦州の一つ] のブースで行われていた試食会


日本のブースにはスローフードの象徴であるカタツムリが描かれている赤い暖簾がかかっており、目立つブースになっていた。ブース前ではお酒の試飲会などを行なっており、多くの人で賑わっていた。

赤いのれんがかかっている場所が日本ブース。


イタリア国内からの出店ブースエリア

イタリア国内からは地域毎にブースエリアが分かれて出店されていた。出店の看板毎にも州の名前が書かれている。



slow food presidiaエリア

Slowfoodにはスローフードプレシディアというプロジェクトがある。presidiaとは「砦」という意味で、消滅の危機に瀕した食品を生産者の組織づくり、販路拡大を通じて支援するプロジェクトになる。会場にはテッラ・マードレでは、Slow Food Presidiaのブースエリアも設けられ、様々な出店がされていた。


slowfood presidioブースエリアにあったイタリアの生ハムカポコッロ。


様々なワークショップ ・カンファレンス・展示プログラム

テッラ・マードレでは多種多様な内容でワークショップ・カンファレンスが開催される。ここで世界中の食に関心のある人々が集まり、食のあり方についてアイデア・知見を交換していく。


会場を歩き回っているとあちこちで写真のような光景が見られる。ウェブサイト上でタイムスケジュールがのっている。


様々なワークショップもあり、実際に味見ができるワークショップもある。会場となるドーラ公園だけではなく、会場近郊の様々な場所でワークショップが開催される。今回は塩倉メンバーと共に、テイストワークショップの一つである「CHOCOLATE FROM BEAN TO BAR」に参加させていただいた。このワークショップでは、Guido Gobino Chocolate Factoryでカカオやヘーゼルナッツの原料からチョコレートを作り包装するまでの過程を見ることができ、生産者の思いを聞きながら最後には実際にできたチョコレートを食べ比べることができる。



これ以外にも多種多様なワークショップが用意されており、下記のURLからワークショップやカンファレンスの内容を知ることができる。

workshop : https://2022.terramadresalonedelgusto.com/en/taste-workshops/

Conference : https://2022.terramadresalonedelgusto.com/en/conferences/


Enotecaエリア

‟Enoteca(エノテカ)”は、イタリア語ではワインを収蔵する場所という意味があるが、テッラ・マードレではワインの試飲、販売を行なうワインブースとして置かれている。Enotecaブースの近くにはSlow Wine Coalitionというワインを通じたサステナビリティ、景観の保護、農村の社会的・文化的な成長を促すためのコミュニティも紹介されていた。



Youth Tourism Agricultureブース

若い世代の目線から食の世界を考えるというもので、中では様々な展示が行われていた。農業と観光のつながりに着目したり、スローフード・ユース・ネットワークの活動も行われる。


この他にも、「Terra Madre Kitchen」という世界中のシェフが調理したそれぞれの国毎の伝統的な料理を食べることができるプログラムや、「Dinner Dates」といった、著名シェフの料理を学びながら食べることができるプログラムなど、多種多様なプログラムが行われた。


日本ブースでの出店

日本からは60名ほどが日本代表団として参加し、ブースでの出店やワークショップの開催を行なった。テッラ・マードレでの日本代表団の参加者情報や、活動概要はSlow Food NipponのNote記事から見ることができるが、日本の代表団も北海道から沖縄まで様々なエリアから多様なメンバーが集まっていた。塩倉もブースを設けて参加。ブースでは薬湯山塩のお振る舞いを行なった他、塩倉メンバーが展開する「はちみつしろう」の日本蜂蜜のハチミツ「まつのやま茶倉」の神目箒茶(ホーリーバジルティー)を提供。また、十日町地域振興局の職員も通訳・PRサポートとして参加し、新潟県や十日町市を取り巻く雪国文化についても発信を行なった。


おにぎり企画

日本代表団ブースからは、35万人の来場者に対して、日本全国から集まった食材を用いたおにぎりも提供された。塩倉もおにぎり企画に参加し、薬湯山塩の塩むすびを提供し、山塩と共におにぎりを通じて日本の食文化の発信を行なった。


嶋村さん撮影。おにぎりを来場者に配る。


食文化を見つめ直して

5日間の出店を経て無事にプログラムが終了。「食」という国籍関係なく人類全員が関わるトピックを通じて世界から人が集まり、楽しむことで、地球規模で物事を見ると共に、自分の身の回りの食文化を見つめ直す良い機会になった。

十日町市周辺のエリアも独自の食文化を持つ。それは4m近い雪が降るエリアで生きるために、人々が知恵を絞って作り上げてきた雪国の食文化だ。保存食文化から雪下野菜(雪中野菜)、かんずりの雪晒し、雪室の利用、雪の恵みから生まれる酒や米など雪の恵みを豊富に受けている。私の住む地域には地産地消の精神も根付き、その土地の自然に沿った食生活を送っている。その時期時期にとれた新鮮な食物は格別にうまい。コンビニやファストフード、デリバリーサービス、現代のフードシステムによって1年中同じものがすぐに食べられ、選択肢も増えた現代において、このスローフード運動はどう未来の食のあり方にどう影響を与えるのか。現代のフードシステムの便利さには感謝しつつも、自然を愛し、アウトドアや食など自然の恩恵を受ける1人として、なるべくその土地の自然に沿った食を楽しみ、環境に負荷をかけず、自然と共存する人間でありたいと思う。


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