地域おこし協力隊とは 定義、背景、メリット、問題点まで

里山・雪国の暮らし

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2021年10月より新潟県十日町松之山黒倉地域で地域おこし協力隊として移住し、地域活動に参加させていただいている。地域おこし協力隊とは何か、ここで整理していく。


地域おこし協力隊とは?

地方の過疎化問題を解決するため、日本で2009年から始まった制度。都市地域から過疎地域等の条件不利地域に3年間移住し、そこで地域活動を通じて地域住民を支援し、その地域への定住を目指す制度になる。

以下は総務省ホームページからの定義を抜粋。

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期は概ね1年以上、3年未満です。

地域おこし協力隊とは


具体的にどのような活動を行うのか?

活動は多岐に渡り、「一般社団法人 移住・交流推進機構(JOIN)」の募集要項を見てみると、以下のようなカテゴリーから仕事を選ぶことができるようになっている。

  • 農林水産・産業 (農林水産業への従事、地場産品の販売、地産地消の推進など)
  • 環境 (水源地の整備、道路の清掃など)
  • 医療・福祉 (見守りサービス、病院・買い物等の移動サポートなど)
  • 観光 (地域の魅力PR、観光ルート企画立案、来訪客サポートなど)
  • 教育 (学校行事の支援、子どもとの交流活動など)
  • 情報通信 (情報通信技術の普及活動など)
  • 地域づくり (地域行事、伝統芸能の応援、都市との交流事業の応援など)
  • スポーツ
  • 空き家
  • その他 (消防団・青年団への参加、地域施設の運営補助など)

また、私が所属している十日町市の協力隊募集要項ページでは、各地域の詳細をクリックすると、募集要項のpdfを確認することもできる。

(一社)里山プロジェクト



地域おこし協力隊着任中のサポート

着任後も地方自治体や行政から様々なサポートを受けることができる。例えば、総務省主催のサポートは以下の通り:

  • 地域おこし協力隊 ビジネスサポート事業(総務省主催)
  • 地域おこし協力隊 隊員向け研修(総務省主催)

私が所属している新潟県でも県主催研修などがあり、協力隊やOB・OGのつながりを増やす機会を設けてくれる。

  • 新潟県地域おこし協力隊初任者研修

また、地域おこし協力隊は3年後起業する割合も多いことから、起業・事業継承に関する支援制度も用意されている。以下は総務省ウェブサイトの「地域おこし協力隊とは?」参照:

  • 日本政策金融公庫国民生活事業の新規開業資金 :地域おこし協力隊の任期を終了し、地域おこし協力隊として活動した地域において新規開業しようとする者又は新規開業した者が必要とする設備資金(土地に係る資金を除く。)及び運転資金について、貸付利率の引下げ(基準利率より0.4%引下げ)を実施する。
  • よろず支援拠点 :起業に関する相談や経営上の悩みの相談については、「よろず支援拠点」を活用することができる。任期中、起業後、何度相談しても無料。
  • 未来の企業応援サイト「ミラサポplus」 :中小事業者の未来をサポートするサイトとして、情報収集・疑問解決の手段として手軽に活用することができる。
  • 事業継承・引継ぎ支援センター :事業継承に関する様々な悩みの相談については、「事業継承・引継ぎ支援センター」を活用することができる。また、一部の事業継承・引継ぎ支援センターでは、後継者不在の小規模事業者と創業を志す個人起業家をマッチングする「後継者人材バンク事業」が行われている。


地域おこし協力隊の給料

総務省のページでは、地域おこし協力隊の給料は下記のように紹介されている。

 隊員1人あたり400万円(報償費等200万円、その他の経費200万円)を上限

 募集に係る経費について、地方自治体1団体あたり200万円を上限

 協力隊最終年次又は任期終了翌年の起業する者の起業に要する経費として1人あたり100万円を上限

※1人あたり200万円を標準とし、スキルや経験、地理的条件等を考慮した上で、最大250万円まで支給可能とする。この場合、その他の経費分を活用することで対応(1人あたりの上限は400万円)。(平成27年度から適用)

総務省 ー 地域おこし協力隊・集落支援員・復興支援員・外部専門家・地域活性化起業人


地域おこし協力隊の着任後の進路

令和2年度調査令和2年度3月31日までに任期を終了した隊員6525人のうち活動地と同一市町村内に定住したのは3310人。(約6割)この3310人の隊員の進路は以下のようになっている。


令和2年度:同一市町村内に定住した隊員の進路


「令和2年度 地域おこし協力隊の定住状況等に係る調査結果」によると、任期終了後は以下のような職についている。

就業:

  • 行政関係(自治体職員、議員、集落支援員等)349名
  • 観光業(旅行業・宿泊業等) 158名
  • 農林漁業(農業法人、森林組合等)117名
  • 地域づくり・まちづくり支援業 102名
  • 医療・福祉業 76名
  • 小売業 66名
  • 製造業 61名
  • 飲食業 51名
  • 教育業 39名

就農・就林等

  • 農業 341名
  • 林業 45名
  • 畜産業 18名
  • 漁業・水産業 6名ほか

起業

  • 飲食サービス業(古民家カフェ、農家レストラン 等) 207名
  • 宿泊業(ゲストハウス、農家民宿 等) 143名
  • 美術家(工芸含む)、デザイナー、写真家、映像撮影者 137名
  • 6次産業(猪や鹿の食肉加工・販売 等) 94名
  • 小売業(パン屋、ピザの移動販売、農作物の通信販売 等) 91名
  • 観光業(ツアー案内、日本文化体験 等) 74名
  • まちづくり支援業(集落支援、地域ブランドづくりの支援 等) 58名 ほか
  • 事業継承27名(酒造の承継、民宿の承継 等)


地域おこし協力隊制度で起こる問題点

一方で、地域おこし協力隊は2009年からできた新しい制度ということもあり、様々な問題点も出てきている。「地域おこし協力隊」と調べてみると「他のキーワード」で出てくるネガティブキーワードが目立つ。

2022年3月地点、「地域おこし協力隊」とgoogleで検索した時の「他キーワード」結果


「Ubersuggest」というツールで「地域おこし協力隊」やその他の関連キーワードがどの程度グーグルなど検索エンジンで検索されているのか調べてみた。月間検索数のランキングを見てみると、「地域おこし協力隊ひどい」のキーワードが上位に。


2022年3月地点、検索エンジンで1ヶ月に検索された数(検索ボリューム)のランキング


2022年3月地点、1ページ目に出てくる記事を見てみると、様々な問題提起、批判的な意見、体験談などが出てくる。この制度が始まってからどのような問題が上がってきているのだろうか。


具体的な問題点

ウェブ上で問題提起されているものをまとめてみると、主に以下のような問題点が見えてくる。


地元民が関与せず、行政側だけで募集を進めた時のミスマッチ

地元民がどんな人が欲しいのかというヒアリングをせずに行政だけで募集を推し進める結果、協力隊が入っても地域の人には協力隊のことが全く伝わっておらず、協力隊が放置状態にあう。(地域の人もどうしていいかわからないし、協力隊も途方に暮れる状態)


仕事内容のミスマッチ

募集要項が曖昧になると、業務内容が曖昧になり、協力隊がイメージしていた仕事と地方自治体または地域の人が思っているやって欲しい仕事にミスマッチが生まれる。


協力隊のやりたいことに対してストップがかかる

行政には行政側のルールがあり、地域にも地域のローカルルールが存在しており、協力隊がやりたいと思って出す提案・企画がなかなか進まない。

このため、研修では地域のやって欲しいこと、自分のやりたいことを明確にする作業や地域・行政の諸事情などを学ぶ時間が確保されていることもある。


長時間労働や連日勤務

地域おこし協力隊は地域住民のお手伝いなども仕事に含まれるが、関係性のために全ての仕事を受け入れると、結果長時間労働や連日勤務の問題につながる。


協力隊が何をしているのかわからない

協力隊がどんな活動をしているのかが見えない、またはうまく地域に情報共有されていない。


国からの補助金400万円を丸々使うことができない

報償費(給料)200万とは別に支給される活動費200万円を自由に使うことはできない(または満額使えない)


用意されている住居の質が悪い

協力隊にはあらかじめ住居が用意されているが、用意されている住居がボロボロだったりして、生活の質が担保されていない。


副業禁止

副業が禁止されている。


地域おこし協力隊の数の推移

この制度が生まれたのは2009年。制度開始時点では89人から始まり、2020年には受け入れ自治体が1,065で、5,000人以上が活動するようになっている。


参照:令和2年度の地域おこし協力隊の隊員数について


参照:令和2年度の地域おこし協力隊の隊員数について


地域おこし協力隊が生まれた背景

そもそも地域おこし協力隊はどのように生まれたのか。背景には地方の過疎化や高齢化の問題がある。地方から都市部への人口流出が進み、「限界集落」と呼ばれる地域が各地でできるようになった。限界集落とは人口の50%以上が65歳以上で、中山間地域や山村地域で共同生活の仕組みの維持が難しくなっている地域のことを指す。こうした状況を改善するために、政府は「地方創生」を発案し、地域おこし協力隊をはじめとして様々な地域振興政策を打ち出すようになる。地方創生によってそれぞれの地域で住みよい環境を維持し続けることを目指している。


人口流出の推移

過去、地方から大都市圏への転入は止まらず、1954 - 1970年頃までは日本では高度経済成長期にあたり、地方から東京圏、または大阪圏への大移動が行われている。その後も、基本的に年間約100000人ほどの単位で東京圏では転入があり、地方エリアでは転出がある。


東京圏: 東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の1都3県 / 大阪圏:大阪府・京都府・兵庫県・奈良県 / 名古屋圏:岐阜県、愛知県、三重県 / 転入者数データはこちら / 転出者データはこちら / 男女別転入超過数データはこちら


過疎化による影響

そもそもなぜ過疎化を止めるために様々な施策がうたれているのか。下記のような悪影響が考えられる。

  • 過疎の集落や市町村では働き口が減少
  • 耕作放棄地の増大や住宅の老朽化、空き家の増加
  • 獣害や病虫害等といった問題
  • 地商店やスーパーの閉鎖、公共交通の利便性低下などによる、地域住民の生活水準の低下
  • 食料供給の面で農家がいなくなることによる、都市部の生活の悪影響
  • 広い面積を占める農地や森林の保全を通じて、都市部も含めた環境維持や温暖化対策に悪影響


中山間地の生活を守ることによるメリットは以下の記事にも書いた。


多面的機能とは 農業・農村が持っている多面的機能

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