山形県に隣接する村上市は古くから独自の文化圏を形成してきた城下町があり、江戸時代から続く豊かな鮭文化を現在も継承している土地でもある。今回訪れたのは昔ながらの鮭文化を守り続けている鮭加工品製造の老舗「千年鮭 きっかわ」。「千年鮭 きっかわ」の公式サイトによれば元々1626年に米問屋として創業し、1850年には酒造として酒造りも開始。鮭製造業のきっかけとなったのは1945年で、当時のインスタントや化学調味料ブームを背景に、村上の伝統の鮭料理が急速に作られなくなってきたことを危惧し、13代目吉川豊蔵とイサヲが江戸時代から受け継がれてきた吉川家の鮭料理を基に各地で講習会を開き、鮭料理の伝承に尽力したのがきっかけだとしている。

木造の建物に足を踏み入れると、こだわりの鮭製品の数々が並び、さらに奥に入っていくと数え切れぬほどの鮭たちが吊り下げられている。作業所の中には独特の良い香りが漂う。


村上の鮭料理は百を超える種類があるそうだが、その中には発酵させて作る料理もある。塩を引いた鮭を熟成させる「塩引き鮭」、薄く切った塩引き鮭を日本酒に浸して作る「鮭の酒びたし」、塩引き鮭を麹を合わせたご飯に漬けた村上の正月料理「鮭の飯寿司」など、様々な発酵料理がある。

村上市の岩船港鮮魚センターでも鮭を干している風景が見られた。この辺りではまだまだ知られていない「海」の発酵食が沢山隠れているのかもしれない。「海」の発酵食を楽しむ手段として、村上エリアの探索が面白そうだ。
