稲刈りの後は稲を乾燥させる必要があるが、現在慣行栽培で行われる機械乾燥が主流になる前は「稲架掛け」をして、稲を天日干しで乾燥させていた。今回はその昔ながらの乾燥方法を実践してみる。
稲架掛けとは
稲架掛けには、はざ掛け・はさ掛け・はぜ掛けなど様々な呼ばれ方があるが、いずれにせよ刈り取った稲を棒などにかけて天日干しにし、自然乾燥する工程を指している。現在の慣行栽培では刈り取ったあとすぐに機械乾燥する方法が主流となったが、稲架掛けは昔から行われていた方法だった。
お米の水分量は農家さんの好みや考えにもよるが、大体15%ー16%を目指して乾燥させていく。機械乾燥の場合は乾燥機に入れて1日もすれば終わるが、自然乾燥の場合は2−3週間、雨などが続いたりすればもっと長くかかる場合もある。
この稲架掛けによる乾燥によって、稲だけでなく、ワラも一緒に乾燥することができる。ワラは昔はぞうり、すげがさなど、ワラを使った衣料品などで使われていたため、貴重だった。
また、ワラは「塞の神行事(どんと焼きなどともよばれる)」などの行事にも活用できるため、稲架掛けによる乾燥を通じて良い状態でワラを残していた。現在でも刈り取ったワラを残して小正月行事のために使われている。
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稲架掛けの準備
稲架掛けを作り始めたのは9月7日。稲架掛けの場所選びから始まる。稲架掛けの場所には日当たりの良さや、田んぼから遠くない場所など、色々な条件を考えた。今回は私が管理させていただいた田んぼの近くでは大地の芸術祭の作品「パレス黒倉」があり、その近くに稲架掛けに良さそうな場所を発見。作品を見た人が稲架掛けも見れる良い機会を作れるのではと思い、設置を決定する。
梯子状になるように棒を支柱に対して紐で結っていくのだが、支柱となる縦木があまりに太すぎると、結うのが難しくなる。なので支柱としてちょうどいい太さの木を切って支柱として立てる作業を行った。支柱となる木は重く立てるのも一苦労だったし、そもそも木を切って運ぶのもチェーンソーや軽トラが必要になり困難だったが、黒倉集落の地域の方が道具を貸し出してくれたり、木を立てるのを手伝ってくれたり、色々手を貸してくれたおかげで稲架掛けの作成に漕ぎ着けることができた。
支柱を3本立てて固定したことで、今度は横に棒を結う流れへ。横に結う棒も地域の方が使わない単管パイプを持ってきてくれた。単管パイプを結ぶ作業へ。
こうして無事に稲架掛けが完成。
稲刈り後の稲架掛け
稲架掛けの準備が終わると、いよいよ稲刈りをやって稲架掛けという流れになる。2022年の稲刈りは10月8日に完了。その時の様子は下記にまとめた。
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稲架掛けは一段目、二段目までは自分でできるものの、3、4段目と上がるにつれて自分も稲架掛けに登らないとかけられなくなっていく。なので今回は助っ人を呼んで稲を下からパスしてもらうことに。
6、7段目の作業になると、助っ人がいても届かなくなる。なので投げてもらう必要があるのだが、ここで稲の束があまりにも太すぎると重くて投げるのがしんどくなる。調整が必要だ。また、ワラの縛りが緩いと、投げた時に解けてしまい大変だと言うこともわかった。
こんな時に便利なのが軽トラだ。軽トラなら荷台に立ちながら渡すことができるので、高さも得られるし、作業も田んぼで積んだ稲をそのまま渡すことができて楽だ。最終的には私も地域の方から軽トラを貸してもらった。
こうして作業は完了。2−3週間乾燥させて脱穀し、もみすり作業へ移る。
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