雪崩とは:「表層雪崩」「全層雪崩」「弱層」など...雪崩の原因や仕組み、種類を知る

建物の破損・交通網遮断など暮らしの被害から山登り・バックカントリーなどアウトドアでの被害まで、雪崩によって起こる災害は多い。ここではその災害の原因となる雪崩についてみていく。


雪崩とは

雪崩・地滑り研究センターでは、雪崩を以下のように定義している。


雪崩とは「斜面上にある雪や氷の全部、または一部が肉眼で識別できる速さで流れ落ちる現象」をいいます。

雪崩とはー雪崩・地すべり研究センター


雪崩は部分によって呼び方が異なり、以下のような名前がつく。(1)

  • 「発生区」:積雪が崩れて動き始める部分
  • 「走路」:発生した雪崩が通る部分
  • 「堆積(たいせき)区」:崩れ落ちた雪が積み重なる部分


参照:日本雪氷学会の雪崩分類名称 (秋田谷・遠藤, 1998)


雪崩の種類

(亀田・高橋,2017)によれば、雪崩の種類は三つの分類によって分けることができる。(2)

  1. 滑り面の位置 (滑り面が積雪内部で起こるか、地面で起こるか)
  2. 雪崩発生の形(一点から雪崩が発生するか、広い範囲で一斉に発生するか)
  3. 雪崩層の雪質(雪崩層が水分を含むか含まないか)


参照:日本雪氷学会の雪崩分類名称 (秋田谷・遠藤, 1998)


表層雪崩と全層雪崩

参照:日本雪氷学会の雪崩分類名称 (秋田谷・遠藤, 1998)


まずは雪崩は滑り面の位置で分類することができる。古い雪の上に積もった雪が滑り落ちる雪崩を「表層雪崩」、地面から雪の層全体が滑り落ちていく雪崩を「全層雪崩」という。



点発生と面発生の雪崩

参照:日本雪氷学会の雪崩分類名称 (秋田谷・遠藤, 1998)


雪崩が一点から雪崩が発生するか(点発生雪崩)、広い範囲で一斉に発生するか(面発生雪崩)によっても分類ができる。


参照:日本雪氷学会の雪崩分類名称 (秋田谷・遠藤, 1998)


乾雪(かんせつ)と湿雪(しっせつ)

参照:日本雪氷学会の雪崩分類名称 (秋田谷・遠藤, 1998)


雪崩層が水分を含むか含まないかによっても分類が分けられる。


雪崩はなぜ起こるのか:雪崩のメカニズム

どのようにして雪崩は起こるのだろうか?斜面に積もった雪は下記の3点が釣り合うことで支えられている。(3)(4)

  • 重力によって落下しようとする力(支持力)
  • 地面との摩擦力(駆動力)
  • 雪粒同士の結合力


参照:「雪崩はなぜ起きるのか」 - 独立行政法人土木研究所 寒地土木研究所


このバランスが崩れ、落下しようとする力(駆動力)が地面との摩擦力(支持力)より強くなると雪崩が発生する。


参照:「雪崩発生のメカニズム」ー防災科研


では駆動力が支持力より強くなるメカニズムには何があるのだろうか?以下のような理由が挙げられる。(4)

落下しようとする力(駆動力)増加の原因:

  • 短時間のまとまった降雪
  • 積雪上への荷重(人・動物が横切るなど)

地面との摩擦力(支持力)減少の原因:

  • 気温上昇による融雪
  • 弱層の形成


参照:「雪崩発生のメカニズム」ー防災科研


表層雪崩の鍵となる「弱層」とは

先ほど支持力減少の原因の中であげた「弱層」とは一体なんだろうか。弱層とは、積雪内の上下の層に対し相対的に破壊が起きやすく、弱い層をいう。(5)


参照:弱層の上に積もった上載積雪(小関・中村, 2017)


「弱層」を体感する

弱層は(ある程度積もる雪国の環境であれば)身の回りでも体感することができる。弱層探検を自宅前で行ってみた。除雪機で除雪した後の雪壁を使用しているので、自然の雪壁とはまた少し違うが、テストとして行う。

まずは雪壁の断面をスコップで綺麗平らにして起き、断面が見やすいようにする。


その後蛍光スノースプレーを吹きかけて層の違いをわかりやすくする。肉眼でもある程度層の違いは見えるが、スプレーをかけることでより層の違いが細かく見えてくる。


スプレーをかけた時の様子。上としたで見え方が違ってくる。


上から指を刺していくと、ちょうど色が分かれてるところで簡単に指が雪の中にサクサク入っていく感覚がわかった。ここが「弱層」になり、雪崩の原因となる。



参照:
(1) 雪崩とは - 雪崩・地すべり研究センター
(2) (亀田・高橋,2017)
(3) 雪崩はなぜ起こるのか - 独立行政法人土木研究所 寒地土木研究所 
(4) 雪崩発生のメカニズム -  防災科研
(5) 雪崩発生のメカニズムと予測の試み 
参照:
亀田 貴雄, 高橋 修平, 2017: 雪氷学, 古今書院, 349 pp. ISBN 978-4-7722-4194-6.


関連記事

関連トピック

#    #    #    #