雪の重さはどのくらいなのか:家根の雪の重さや雪質について考える

雪の重さはどのくらいあるのか。屋根雪を下ろしたり、建設の時に雪の重さを考慮したり、ウィンタースポーツでパウダースノーを求めたり、雪国にいれば意外と考えることの多い「雪の重さ」について。


一立方メートルあたりの雪の重さ

まずはシンプルな単位で雪の重さを考えてみる。一立方メートルあたりの雪の重さはどのくらいになるのだろうか。(亀田・高橋,2017)によれば、積雪の種類を以下のように整理している。


日本語名英語名説明密度 [kg/㎥]
新雪new snow降雪の結晶の形が残っているもの。みぞれやあられを含む。30 ~ 150
こしまり雪lightly compacted snow新雪としまり雪の中間。降雪結晶の形はほとんど残っていないが、しまり雪にはなっていない。100 ~ 250
しまり雪compacted snowこしまり雪にさらに圧力が加わり、雪同士がくっついて丸みを帯びた氷の粒。粒はお互いに網目状につながって丈夫。150 ~ 500
こしもざらめ雪solid-type depth hoar平らな面をもった粒。100 ~ 400
しもざらめ雪depth hoarコップ状の粒からなる、元の雪粒が霜(しも)に置き換わったもの。著しく硬いものもある。200 ~ 400
ざらめ雪granular snow水を含み、大きくなった氷の粒や、水を含んだ雪が再凍結して、大きな丸い粒が連なったもの。200 ~ 500
氷板ice layer板状の氷-
表面霜surface hoar空気中の水蒸気が雪面で凍結したしも-
クラストcrust雪面・積雪層の表面でできる薄い硬い層。-
(亀田・高橋,2017)p86 表3.1の「積雪の分類」より作成


ここの密度の部分が雪の重さになる。単位のおさらいをすると、 「kg/㎥」は一立方メートル(横、縦、高さ共に1m)あたりのkg数で、たとえば 「1kg/㎥」だと一立方メートルあたり1kgということになる。



積雪の分類によればそれぞれの雪によって密度が変わる。新雪で降ったばかりの雪は30kg/㎥ほどの軽さから始まり、ざらめ雪で重くなると500kg/㎥ほどまで達することがわかる。


「雪氷学」p86 「表3.1 積雪の分類」を参照


下の写真は新雪とざらめ雪を方眼シートにのっけて撮影した時の様子。


新雪
しもざらめ雪?またはざらめ雪


一戸建ての屋根の雪の重さはどのくらい?

一戸建ての家の場合、屋根の雪の重さはどのくらいになるのだろうか。一般的な一戸建ての平均坪数は30~40坪だとされている(1)ので、40坪の家の場合を考えてみたい。3LDK~4LDKタイプをイメージする。(4LDK=リビング(L)・ダイニング(D)・キッチン(K)のほかに居室が4つある)「ユーコーナビ」にて屋根面積の早見表を以下のように出していたので引用する。


建坪屋根面積※
20坪36.53㎡~
25坪45.65㎡~
30坪54.79㎡~
35坪63.98㎡~
40坪73.06㎡~
45坪82.18㎡~
50坪91.32㎡~
※一般的なお家に多い、4寸勾配の屋根の場合で算出 / https://yuko-navi.com/roof-painting-area


この40坪に対する家根面積[73.06㎡]を使用して計算してみると、

  • 100kg/㎥の密度の雪が1m屋根に積もると40坪の家の場合、[73.06㎡]と仮定して7,306kg (約7t)
  • 300kg/㎥の密度の雪が1m屋根に積もると40坪の家の場合、[73.06㎡]と仮定して21,918kg (約22t)

という計算になる。もちろん傾斜による力のかかり具合、家根の形状など様々な要素が絡むが、単純計算するとこのような形になる。


73.06㎡で100kg/㎥と300kg/㎥を計算した場合


同じ1mの屋根雪の積雪でも、雪質によってかなり重さに違いが出ることがわかる。


建築基準法における積雪荷重

住宅会社が雪国で家を建てる場合、雪国ではかなり重い雪が屋根にかかってくるために建築もこの雪の重さを考えて家の構造を考える必要がある。屋根に積もる雪の重さを建築基準法の言葉でいうと「積雪荷重」と言い、以下のように計算される。(2)


積雪荷重 = 積雪の単位荷重 × 垂直積雪量 × 屋根形状係数


積雪荷重とは?【1分間で分かる構造】」を参照して作成


  • 積雪の単位荷重:国土交通省によれば、積雪量1cm ごとに1㎡あたり20N(約2kg重)を基準としている。(3) 多雪区域に指定されているところに関しては基準が異なる。例えば新潟県に関しては、1平方メートルにつき29.4ニュートン(約3kg重)以上とする必要がある。(4)
  • 垂直積雪量:垂直積雪量も地域によって異なる。例えば積雪が多い新潟県内を比較してみると、新潟市は垂直積雪量が100cm - 120cmの間で地区ごとに定められているが(5)、特に積雪の多い十日町市の松之山を見てみると370cmとしている。(4)
  • 屋根形状係数:家根の勾配によって変わる


十日町市の松之山は4mの積雪があることもあるために、基準もかなり異なることがわかる。


世界有数の豪雪地帯、新潟県十日町市松之山の積雪量・降雪量を写真で振り返る

新潟は全てのエリアが豪雪地帯に指定されている(令和3年時点)が、その中でも十日町の積雪は日本一を争う、いや、世界有数の豪雪地帯ともいえるかもしれない...4mの積雪を超えた新潟県十日町市松之山の2021 - 2022シーズンの積雪量を写真で振り返る。

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積雪荷重と雪下ろし

積雪荷重を低減させる方法として、家の住民が屋根に登って雪を落とす「雪下ろし・雪掘り」の作業がある。建築基準法では以下のように定められている。


雪下ろしを行う慣習のある地方においては、その地方における垂直積雪量が1mを超える場合においても、積雪荷重は、雪下ろしの実況に応じて垂直積雪量を1mまで減らして計算することができる。

建築基準法施行令 - 第2款荷重及び外力 - 第86条 積雪荷重


積雪の変化を推定する

科学の世界では積雪に関して計算式を作ることで積雪についての状態をコンピューターで推測しようとしている。(亀田・高橋,2017)によれば、積雪深と雪質は降水量、気温、積雪内の温度分布・温度勾配、含水率などによって変化していくので、積雪の圧密(積雪の厚さが時間と共に自分の重さによって薄くなり、密度が増加すること)や変態の過程を計算式にすることで、積雪の変化や雪質の変化を推測するモデル計算が行われている。



家根の雪の重さを推定する計算システム

このモデル計算が実用化するとどうなるのか?一例としては、2018年1月9日から活用を開始している「雪おろシグナル」などの積雪荷重計算システムがある。防災科学技術研究所が新潟大学、京都大学と共同で開発したシステムで、屋根に降り積もった雪の重量情報を得ることができる。「雪おろシグナル」の利用によって積雪の高さだけではわからない積雪荷重を知ることができるため、家屋等の建造物の倒壊を防ぐ雪下ろし作業のタイミングの判断に役立つとしている。(6)


URL : https://seppyo.bosai.go.jp/snow-weight-japan/


今後も積雪モデルの研究がこうした雪害対策に有効なシステムとして利用されることが期待される。


注:
(1) 一戸建て住宅の平均坪数や延床面積。求める広さはどのくらい?
(2) 積雪荷重とは?【1分間で分かる構造】
(3) 建築基準法における積雪に関する基準について 
(4) 新潟県垂直積雪量(積雪荷重)運用基準
(5) 新潟市建築基準法施行細則第10条第3項の規定による垂直積雪量 
(6) 「雪おろシグナル」(積雪重量分布情報)をご活用ください
参照:
亀田 貴雄, 高橋 修平, 2017: 雪氷学。古今書院, 349 pp. ISBN 978-4-7722-4194-6.

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