生命とは何か?

生命とは一体なんだろう?


現在の生命の定義

生物学や生命に関する本の中には生命についての定義が書かれている。

例えば「生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学」によると、生命とは6つの活動を行えることだという。

  1. 代謝する:化学物質を処理して、エネルギーを取り込む
  2. 複雑さと組織を持つ:膨大な原子が複雑に、かつ精密に配置されている
  3. 複製する:(子を産むなど)複製を可能にするメカニズムも含めて複製できる
  4. 発達する:生命は変化し続ける。機械など生命でないものは変化しない
  5. 進化する:生物は複製しつつ、かつ多様性を作る
  6. 自律性を持つ:生命は自主的に決断を下すことができる

またもう少し省略されたバージョンでは、「生命の定義と生物物理学」より、生物の定義をみると、

  1. 自己複製する
  2. 代謝を行う (エネルギー代謝)
  3. 外界との境界を持つこと (細胞構造)

の三つが挙げられる。


どこからが生命でどこからが非生命なのか?

生命の定義が出てきたが、ではどの時点で非生命が生命になるのだろうか。

生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学」では二つの疑問をあげている。

  1. 生きているとみなせる原子の最も単純な組み合わせは何か。
  2. 地球で最も単純な形態の生物とはどのようなもので、それが生き続けるためには何が必要なのか

上の質問を考えると、生命とはなにかを考えるのが少しややこしくなる。

宇宙の始まりから終わりまでと大きなスケールで歴史を見る「ビッグヒストリー」においても、地球が生まれてから生命のいないところにどのように最初の生命が生まれたのかという部分は一つの大きな括りとして扱われている。


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細胞は生命か?


一つの見方としては、生命は細胞の集まりなので、細胞が最小単位と言えるかもしれない。人間も細胞の集まりにすぎない。

しかし細胞自体は化学反応で成り立っているだけの化学物質にすぎないのだという(1)

どこの時点で非生命が生命になるのかはとてもややこしいポイントだ。


生命とはDNA (情報)なのだろうか

物質ではなく、生命とは情報なのではないかという見方もできる。

生物は子を作ったり複製し、DNAを次世代に残すことで、種を存続させようとしているように見えるが、実はDNAが身体に種を残させるように命令しているのかもしれない。



この内容は、「赤の女王 性と人の進化」の本の中で、リチャード・ドーキンスの話が紹介されている。

1970年代にリチャード・ドーキンスは、体とは遺伝子の乗り物にすぎないのであり、遺伝子が進化する為に体を利用していると提唱した。

個体が遺伝子を残そうとするのではなく、遺伝子が人間に食べて、セックスし、子供を育てるように仕向けているのだと。

そしてこのドーキンスの見方は以後生物学の主流となったとも本書では伝えている。(2)

この見方が正しいとすると、DNA、またはその中の情報が生命と言えるのだろうか。

DNA自体も化学物質なので何もできないのは、細胞と一緒だ。


そもそも「生命とは何か」という問いが間違っているのだろうか

そもそも「生命とはなにか」と問うこと自体が間違っているのだろうか。

「フューチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する」の本の中では、物理学者でもあるノーベル賞受賞者のフランシス・クリックが述べている。

前世紀、生物学者は「生命とは何か?」をめぐって激しい議論を戦わせたが、今ではDNAの知識によって、科学者はこの問い自体が明確に定義されていないことに気づいている、と。(3)

「生命とは何か」という単純な問いはもっと様々なバリエーションがあり、複雑なのだと言っている。


全てが原子なら、全ては死んでいるのか?


この世のものは、全て原子として考えることができる。

そう考えると、全てのものは死んでいて、もともと「生きている」という概念自体ないのだろうか。

だとすると、「生命とは何か」という疑問も意味がないということになる。

どこかの地点で非生命が生命となる区切りはあるのだろうか?


参照:
(1) ピーター・ウォード,ジョゼフ・カーシュヴィンク. 生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学 (Japanese Edition) (Kindle Location 812). Kindle Edition.
(2)マット リドレー. 赤の女王 性とヒトの進化 (Japanese Edition) (Kindle Location 230). Kindle Edition.
(3)ミチオ・カク. フューチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する (Japanese Edition) (Kindle Locations 5185-5186). Kindle Edition.

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