エネルギーは私たちの生活に密接に関わっているだけでなく、生命ができる上でもエネルギーは不可欠だった。
そして現在気候変動対策が叫ばれている中、今後の人口を支えながら地球環境を守るために、どのようにエネルギーを消費し、生産するかがとても大事になる。
でもそもそもエネルギーってなんなんだろう?普段の生活でどこからエネルギーをとってきてどんなエネルギーを使っているんだろう?
そもそもエネルギーとは?
そもそもエネルギーとは一体なんなのだろう。Wikipediaを初めとして多くの場所でエネルギーとは「仕事をすることのできる能力」と説明している。
そしてそのエネルギーの種類には以下のようなものがあり、それぞれのエネルギーの種類によって、どんな仕事をするかは異なる。
- 電磁気エネルギー
- 電気:電気を流す
- 磁気:磁場にある空間に蓄えられている
- 電磁波エネルギー
- 光:植物に光合成をさせる
- 放射線:物を通り抜けたり(レントゲンなど)、性質や状態を変える(米の品種改良など)
- 化学エネルギー
- 結合:原子と原子を切り離す
- 核エネルギー
- 核分裂:原子核の分裂
- 核融合:原子核の融合
- 熱エネルギー
- 熱エネルギー:ものを温める・燃やすなど
- 力学的(機械)エネルギー(運動エネルギー / 位置エネルギー)
- 位置エネルギー:高い場所にある物体が持っている(低い場所に落ちる瞬間に運動エネルギーに代わり、物体は下に落ちていく)
- 運動エネルギー:物体を動かす
などがある。
エネルギーとは気体?液体?個体?法則?システム?情報?
先ほどエネルギーは多くの場所で「仕事をすることのできる能力」と説明されると紹介したが、「仕事をすることのできる能力」とは一体なんなのだろう?
そもそもエネルギー自体は触れることができる物質なのか?それとも触れない法則やシステム、情報のようなものなのか?
実はこのエネルギーとはなんなのかという質問の答えに対しては、あまたのノーベル賞受賞者たちでさえ、満足のいく答えを与えるのに苦労している。(1)
Smil(2018)の著書「エネルギーの人類史」の中で物理学者リチャード・ファインマンの言葉を紹介している。
これはぜひとも自覚しておいてほしいのだが、今日の物理学において、われわれはエネルギーの何たるかをまるでわかっていないのである。エネルギーは、ある一定の量を持った小さな塊としてやってくるというようなものではない
バーツラフ・シュミル. エネルギーの人類史 上 (Japanese Edition) (Kindle Locations 164-167). Kindle Edition.
また、Smil(2018)はエネルギーとは何かという問いに対して、現段階で分かっていることを複数挙げている。
- 物質は全て静止中のエネルギーである
- エネルギーは多様な形をとって存在する
- 異なるエネルギーの形は無数の変換によって結び付けられている
エネルギーの始まりは?
宇宙の始まりであるビッグバンの瞬間、宇宙全体は原子一個よりも小さく、今日の宇宙に存在している全てのエネルギーと物質がその中に凝縮されていた。そこから宇宙が広がり、現在の世界ができていったのだが、この凝縮されたエネルギーはなぜ、どのように生まれたかはまだ解明されていないことも多い。
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形が変わるエネルギー
エネルギーには多様な種類があり、変換されると紹介したが、具体的にどのように変換されるのだろう。
一例を図にしてあげてみる。

具体的な例を挙げてみる。
- 手を擦る(力学的エネルギー[運動エネルギー])→手が温かくなる(熱エネルギー)
- 植物が光合成をして栄養分を得る(光エネルギーから化学エネルギーに転換する)
- 洗濯機のコンセントを指して(電気エネルギーでモーターを動かす)洗濯機を回す(力学的エネルギーへ)
といったようにエネルギーは無数に変換されている。
エネルギーの分類
エネルギーは一次エネルギー、二次エネルギーという形で分類することができる。
- 一次エネルギー:自然界に元々あるエネルギー(石油や天然ガス、石炭、太陽光や水、風、地熱など)
- 二次エネルギー:使いやすいように加工されたエネルギー(都市ガスやLPガス、ガソリン、灯油、電気など)
基本的に二次エネルギーは、一次エネルギーから加工されて使われている。

エネルギー資源の種類
普段私たちが使っているガスや電気や石油を含め、エネルギー資源はどこから出てくるのだろうか?
一次エネルギー
一次エネルギーには以下のようなものがある。
- 化石燃料(石油・石炭・天然ガスなど)
- 核燃料(ウランやプルトニウムなど)
- 再生可能エネルギー
化石燃料
化石燃料とは、動物や植物の死骸が土に埋もれ、長い年月の間に地球内部の熱や、土や水の上からの圧力で変化してできた有機物の燃料のことで、主なものに、石炭、石油、天然ガスなどがある。
- 石油:液体で、プランクトンが積み重なった
- 石炭:個体で、枯れた植物が積み重なった
二次エネルギー
二次エネルギーには以下のようなものがある。
- 電気
- 石油製品(灯油、軽油、ガソリンなど)
- ガス
電気
電気は様々な別のエネルギーに変換でき、普段の生活でもとても役に立っている。
- 電気→運動エネルギー(磁気):モーターなど
- 電気→化学エネルギー:電池など
- 電気→熱エネルギー:火力発電、IHクッキングヒーターや炊飯器などの調理器
- 電気→光エネルギー:家の証明、懐中電灯など
そもそも電気とはなんだろう?原子は中心となる原子核と、その周囲を回転する電子から成っている。
原子核の中にある陽子はプラス、電子はマイナスの電気を帯びている。電子は原子核の周囲を回転するが、軌道を離れる時があり、このこの軌道を離れた電子(自由電子)の動きが電気となる。

石油製品
石油製品は原油を蒸留(一度加熱して液体から気体にし、冷やして再び液体にする)させて作る。
すると上の方に軽い気体が上がっていき、下の方に重い液体がたまっていく。
液体になる温度の違いで、色々な種類の石油製品ができる。

ガス
ガスにはガス導管を通じて各家庭へ供給する都市ガスとボンベに入っているLP(プロパン)ガスがある。
都市ガスもLPガスも、日本では給湯器やコンロなどの燃料に使われることが多い。
違いを下記にまとめた。
- | 都市ガス | LPガス(プロパンガス) |
---|---|---|
使用方法 | 給湯器やコンロなどの家庭用・業務用ガス機器の燃料など | 給湯器やコンロなどの家庭用・業務用ガス機器の燃料など |
ガスの供給エリア | 都市部中心 | 全国どこでも |
ガスの供給方法 | 地下の導管 | 各戸へ設置されるボンベ |
発熱量 | 11,000kcal/㎥ (火力少ない) | 24,000kcal/㎥ (火力多い) |
ガスの原料 | 液化天然ガス | 液化石油ガス |
文明の発展とエネルギー
上記のような、普段私たちが使っているエネルギーはもちろんのこと、様々なエネルギーを通じて人類は現在の文明を形作ってきた。
太陽光
植物は太陽から光エネルギーを受け取り、光合成をすることで必要な栄養分を作ってきた。
こうしたエネルギー変換は、人類が農耕社会になり、穀物を食べて生きるようになってから人類にとっても重要になった。米を主食としている日本も例外ではない。
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光合成で二酸化炭素と水から炭水化物を作るこの変換は、人類の栄養素を支える重要なエネルギー変換だった。
火
人間が火を起こし、熱エネルギーを利用し始めた。
火を使うことで調理を可能にし、消化に使っていたエネルギーを脳の成長に回すことができるようになった。
人類の食の内容も火によって大きく変わっていく。
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家畜・生物
畑などを耕す時に、動物のパワー(運動エネルギー)を利用し始めた。
人間以上のパワーを作物の育成に投入することが可能になった。
水力
水は高いところから低いところに流れていくが、高いところにある時の位置エネルギーを利用する水車などの発明で水を汲んだり、パワーを利用していった。
風力
風車で水をくんだり、穀物を粉にしたりして、エネルギーを利用していた。
蒸気
蒸気機関の発明によって、蒸気を動力として利用することが可能になった。
ここから第一次産業革命が始まったとされる。
使われているエネルギーの推移
OurWorldInDataからは世界で使われているエネルギーの推移を見ることができる。
1800年ごろから徐々に石炭(Coal)が使われ始め、1870年代ごろから石油(Oil)、1890年代ごろから天然ガス(Gas)が使われ始めている。
下のTraditional biomasは木や木炭、農作物の廃棄物を指している。
TWhは「テラワット時」で、もし1TWhの場合は1TW(TW=1,000,000,000キロワット(KW)=1,000,000,000,000ワット(W))を1時間消費した時の電力量を指す。
日本では、昼間在宅者がいる2人世帯の家庭で、空調の要らない季節は一日あたりの消費電力は平均で7.7kWh程度、夏などエアコンの稼働率が上がると、倍の17.4kWh程度の電力を使っている。(2)

今後期待される次世代エネルギー
このまま現在主流になっている石炭、石油を今のペースで使い続けることは気候変動の現状を見ても持続可能とは言い難い。
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これからは他のエネルギーも使う必要性が出てくるが、どのような代替エネルギーがあるのだろうか。
- 太陽光発電:太陽光パネルを設置して、太陽の光エネルギーから直接電気を作る。
- 風力発電:風で風車を回し、風のエネルギーを電気エネルギーに変換する
- 地熱発電:地熱を利用して発電する
- バイオマス発電:動物や植物から生まれた生物資源(バイオマス資源)を燃やしたりガス化して発電する
- バイオマス熱利用:バイオマス発電で発生した蒸気の熱を利用したり、バイオマス資源を発酵させることで発生するメタンガスを利用する
- 太陽熱利用:太陽の熱エネルギーで水や空気などを温め、給湯や冷暖房に活用する
- 雪氷熱利用:冬場の雪や氷を保管し、夏の冷房や冷却などに利用する
- バイオマス燃料製造:バイオマス資源を使い、ペレットなどの固体燃料、バイオエタノール、バイオディーゼル燃料などの液体燃料、バイオガスなどの気体燃料を作る
注: (1) Smil. 2018 (2)一般家庭の一日の消費電力
参照: Smil, V. (2018). Energy and civilization: A history. The MIT Press.(バーツラフ・シュミル 『エネルギーの人類史』 塩原通緒訳 青土社)