食の歴史 人類は食とどのように向き合ってきたのか

食と自然を学ぶ

食によって人間や社会はどのように変化したのか。逆に、社会や科学、テクノロジーの変化で食はどのように変化したのか?

関係性についてここで書いてみたい。


Contents

狩猟採集時代の食と人類

Attali (2019)によれば、狩猟採集には4つの基本要素があるという。

狩猟採集の4つの基本要素:

  1. 採集によって植物性食料を得る
  2. 狩猟によって肉を得る
  3. 仲間どうしでの協力
  4. 食料を加工する


植物性食料を得る

人間は採集によって植物性の食料を得ていた。そして採集に有利な身体に変化していった結果として、二足歩行になった。(1)

二足歩行で立って歩くことで、移動時のエネルギーを節約できた。歩行中のチンパンジーと人間の大人のエネルギー消費量を測定した研究では、人間の歩行はチンパンジーの四足歩行と二足歩行のどちらと比べても、75%エネルギーコストが低い。(2)

また二足歩行により、両手が解放され、穴掘りなどの別の作業に使えるようになり、じゃがいもや生姜などの球根などを掘って食べれるようになった。(1)

さらに重要なことに、両手が解放されたことで、道具を作り、使うことが可能になり、それが大きな脳の発達や、言語、その他の人間独自の進化を生み出すことにつながった。(1)


肉を得る

肉を得るようになったことは人類にとって大きな進歩だった。

Harari (2018)は肉を得ること、そして調理によって消化のためのエネルギーを大幅に節約し、今まで消化器に使っていた余ったエネルギーを大きな脳の成長と維持に回すことができたと述べている。


仲間同士での協力

肉を得るということは、仲間たちの互恵と協力の促進にもつながった。

肉を手に入れた幸運な狩人は、肉がとれなかった時に人から肉をもらうことを期待し、得た肉を他者に分け与えようとする。また、男性が狩猟で得た肉と女性が採集で得た植物を共有することで、男女間に絆を生ませることにもつながった。(3)


食料を加工する

食料の加工・調理は人類の身体の構造や歴史を大きく変えた。

まず加工によって、食べ物の消化が簡単にできるようになった。石器を使って塊茎や肉片などの生の食物を切ったり叩いたりするだけで、一口ごとのカロリー摂取量もぐっと増加する。(1)

そして調理の中でも、狩猟採集民の火の利用は人類の食歴史の大きな変化の一つとなった。Attali (2019)は火の利用による利点について以下を挙げる:

  • 食物が消化しやすくなったため、多くのエネルギーを脳に利用できるようになった
  • 毒性のある植物も食べれるようになった
  • 寒い地域でもくらせるようになった
  • より手の込んだ料理を食べれるようになった
  • 病原菌やバクテリアを殺したりできた
  • 皆で火を囲んで一日を長く利用できるようになった
  • 炉は会話を促し、言語と神話を生み出した


増える脳の容積

狩猟採集時代に、草食性食料を求めて二足歩行になったこと、道具を使えるようになったこと、肉をたべられるようになったこと、そして火を使って食べることにより、腸への負担は減り、消化するためのエネルギーが減ったため、脳の容積は増えた。

そしてこの脳の重量比が増えるということは、社会的な複雑さの到来に必須の条件だった。(2)


穀物の栽培・農耕社会

Painter of the burial chamber of Sennedjem - The Yorck Project (2002年) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., public domain


狩猟社会の食から、大きく変わった転換点は農耕社会へ移行した時だ。

農耕社会になることで、定住が始まり、村ができるようになった。 作物の栽培によって食物も余剰ができはじめ、食糧生産のためだけに動く必要がなくなってくる。

すると、狩猟社会では現れなかった様々な仕組みが出来上がるようになる。(4)

  • 天候の占い
  • 帝国の出現(文字の開発、富の蓄積、軍隊を賄う)
  • 権力者の登場(食にも違いが現れる)
  • 宗教と食の繋がり(仏教、インドの菜食主義、健康への繋がり、ユダヤ教、絶食など)

また、穀物を多く作ることで大量の醸造酒を作れるようになり、麦からビール、米から清酒など、酒が大衆化していったのもこの時期にあたる。


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農耕社会で出てきた新しい問題

狩猟社会から農耕社会にうつったことで、狩猟採集社会ではなかった新たな問題も出てくるようになった。

Lieberman(2014)は下記の点を挙げる。

  • 栄養の多様性と質が損なわれる(食の画一化 1万年前のヒトの食は五千種類以上。現在は60%は四種類の作物(小麦、とうもろこし、じゃがいも、米))
  • 少ない種類の作物に依存するので、周期的な食料不足や飢饉に弱い
  • 澱粉の摂り過ぎによって起こる虫歯(医療技術のない時代は虫歯は一大事だった)
  • 疫病・病原菌
  • 不潔さ
  • 社会に生まれるヒエラルキー(圧政、奴隷制、戦争、飢饉)


食と宗教

宗教によって人々の食習慣も変化が出るようになる。

例えばイスラム教では、食事の前後に祈祷を行ったり、豚やアルコール摂取が禁止されていたり、ラマダンのような定期的な断食がある。(4)

インドでは菜食主義やアーユルヴェーダのような考えも出てくるようになる。(4)


食品の保存

昔から、どのように食料を保存するかというのは大きな問題だった。昔から人々の知恵、テクノロジーの恩恵によって様々な保存方法が生み出された。

ウィキペディアでは食品保存の方法について以下のように羅列している。

  • 乾燥
  • 塩漬け
  • 糖蔵
  • 燻煙
  • 冷蔵、冷凍
  • 低温殺菌
  • フリーズドライ
  • 加熱、沸騰
  • 酢漬け
  • 灰汁漬け
  • シヴェ
  • 発酵
  • 食料照射
  • 食品添加物
  • パルス電解殺菌
  • Nonthermal plasma
  • Pascalization
  • Biopreservation

4万年前には人類は肉を洞窟内で冷凍保存したり、燻製にしたり、塩漬けにしたり、脂肪漬けなどで食料を保存できるようになっていた。(4)

そして狩猟採集時代の大規模で長期的な食料貯蔵は、時間、労働、自然に対する狩猟採集民の姿勢を変えることにもつながり、結果集団が高い人口密度で安定できるようにもなった。(2)

現代においても、食糧保存は未だ課題の一つであり、家庭レベルで様々な工夫がされている。


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容器を使った保存

最初の大規模な缶詰工場の1つ「The Berthold-Weiss Factory」(1885年), Public Domain


1800年代の産業革命の時代、パスツールが低温殺菌法を発明してからは、食品製造業者がさまざまな食品を、缶や瓶などの密閉容器に詰めて安全かつ経済的に貯蔵する方法を続々と開発していった (1)

1804年には、砂糖菓子製造業者のニコラ・アペールが食品を瓶詰めにして熱して密閉し、酸素と微生物が入らないように保存する方法を考案。(4)

1810年には初めて缶詰による保存の方法が発明された。これは軍事利用のために、ナポレオン・ボナパルトの命令でフランスの陸軍が考案したものだった。


「冷たさ」を利用する

「冷たさ」は食にとってとても価値がある。

1800年代の初期の頃に、テューダーによって氷貿易が確立されてから、アメリカ南部諸州の人が氷で冷やした飲み物を楽しんだりなど生活必需品となった。1850年までにはテューダーの成功を真似する人が出て、ボストンの氷は年に10万トン以上も世界中に出荷されることになった。(5)

天然氷をどこでも使えるようになったことで、天然氷を使った冷却室を作れるようになり、肉の加工処理を一年中できるようになった。(5)

アメリカでは冷却室や冷蔵車、冷蔵船を作れるようになったことで、冷蔵による輸送であらゆる種類の食品を遠方に運ぶことを可能にし、昔ながらの牛肉加工処理場は地方の商売から国際的ビジネスに変化した。(5)


大量生産、加工食品の出現

産業革命を経て、人類は大量生産・加工食品の生産を可能にした。

食事のスタイルも含めて大きく食が変わっていく。


大量生産

食の製造方法が変化して大量生産が可能になった。

大量生産のために起きた変化として、Roberts(2009)は以下の点を挙げる。:

  • 大量生産のための作物や家畜の品種改良
  • 防腐剤や香料などの添加
  • 議会の介入や法律の整備、化学の分野における躍進
  • 研究補助を受けた大学での研究者たちによる、より早く、より大きく成長する植物の新種や動物の交配種開発
  • 食肉産業の飼料工場から食肉解体工場までの効率的なサプライチェーン


日本においても例外ではなく食品添加物は広がっていく。



加工食品の出現

急速に工業化が進む社会では、時間が何よりも貴重な商品となりつつあったため、時間短縮のための加工食品が出現するようになった。(6)

また産業革命によって都市部の工場で働くようになった人たちが、自ら作物を育てる手段を失い、料理をする時間もなくなった時、簡単に手に入り、調理が楽で、すぐに食べられる食品を求めるようにもなった。(6)

外食需要が増えたため、食料を事前に調理し、調理済みの食料を貯蔵するための手段が必要になった。(4)

この頃には、こうした需要に答えられるだけの食品産業の構造がすでに出来上がっていた。(6)

  • 組み立てライン
  • 缶詰や瓶詰めの保存技術
  • 冷蔵技術
  • 拡張を続ける鉄道やトラック輸送網、船会社のネットワーク

こうした構造によって、大量に、かつ素早く、低コストで、しかも比較的品質を保ったまま食品を加工し、遠く離れた市場に出荷することが可能になった。


食のスタイルの変化

19世紀末には世界人口が16億人に達し、世界の政治経済の中心がヨーロッパからアメリカへ移行し、アメリカの資本主義がさらに食の形式を変化させたと述べている。(4)

食事にかける時間が短縮し、家計における食費の割合が住居、衣服、交通、娯楽の費用のために減った。(4)

戦後の高度経済成長で女性たちも働く人が増え、時間がより貴重な資源となることで、女性にとっても自分で働いた賃金を払って人に調理してもらう方が理に適っているように思えるようになった。


食品産業と経済と健康

食品産業はビジネスであるが上に利益を出さなければ存続できない。

しかし食は人間の健康にも密接に結びついているため、経済の構造と健康の問題は密接に関わっているといえる。

Roberts (2009)は人間が経済システムで評価する効率性、大量生産、価格の安さ、徹底した加工管理、均一性などの経済的な価値を追求することに対して、以下の例を挙げて警鐘を鳴らした。

  • 大量生産によって消費者は自分達がどんなものを食べているのかわからなくなった(山ほど塩分、油脂、甘味料が入っており、加工食品、健康問題と関連がある保存料も含まれているかもしれない)
  • 利便性の高い加工食品やファストフードなどの提供で家庭料理や伝統的な料理、料理文化がなくなっていく

また、Roberts (2009)は食品産業の食品の売り方についても物議を醸した。

  • 食品のスーパーサイズ化や、自販機をおいて衝動買いをさせることで、消費機会や消費量を増やそうとする
  • 広告で間食が立派な食事であると消費者を納得させる。息抜きに必要とか、スナックの栄養価を伝えて必要なものなのだとメッセージを送る
  • 人気アニメキャラクターに高カロリー食品を食べさせて子供との接触を図る
  • 財政難に苦しむ学校に資金を提供し、代わりに給食プログラムをファストフード業者に委託させる


大量生産・加工食品の供給から生まれた問題点

産業革命の流れで大量生産が始まり、食材が安くなり、人々も食事の準備や食事自体にかける時間が少なくなり、便利と言えるようにはなったものの、様々な問題も生み出した。

  • 食事における人々のコミュニケーションの減少
  • 肥満からくる病気
  • 大量生産による環境破壊・資源の無駄使い
  • 動物に対する権利

フランスで生まれる地方主義

フランスでも産業革命によって生活の利便性が高まったもののパリと地方の経済的格差の広がるのではないかとか、フランス各地の「個性」が失われるのでは、という懸念も生まれ始め、ここから各地方の経済的・文化的な豊かさを追求する「地方主義」が生まれる。

1920年代には当時の美食家たちの中にも「地方主義」に賛同する者が現れ、元来存在してきたフランス料理の芸術性と多様性の復興を目指す活動が始まった。


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現代人の食と病気

2021年現在、貧困に苦しむ地域がありながらも、かたや先進国は肥満による病気で苦しんでいる。

なぜ肥満による病気で苦しんでいるのか?これは元々の人間の作りと社会構造の変化が密接に関わっている。


元々の人間の設計と変化する社会構造のミスマッチ

Lieberman(2014)の言葉を借りると、「ミスマッチ病」が多発している。

元来人間は、食料が不足した状態を想定して設計されている。また、人間は動物性食物から体を作り、体は炭水化物を燃料として消費するので、脂肪やタンパク質の味やでん粉や糖分の甘い味を好むようにできている。(1)

身体の構造がエネルギーを多く含む食物を好み、また溜め込もうとする構造である一方で、産業革命から、食品の大量生産・加工食品の生産がどんどん進み、先進国ではより安い値段で、より多くの糖分・脂肪を取れるようになった。(1)

大半の食品は高度に加工されていて、糖と脂肪を大量に含む一方で、食物繊維が取り除かれている。(1)

また、世の中の仕事がITなどの体の使わない仕事への移行し、人々はどんどん動かなくなっている。動かなくてよくなり、容易に多くの糖分・脂肪を取れる社会構造となったので人々は逆に肥満で苦しむようになってしまった。


肥満産業

Roberts(2009)は太らせるファストフード店から肥満治療を行う医師や栄養士までを総称して「肥満産業」として紹介した。

その業界全体の収益は年間三千百五十億ドル(約二十六兆九千八百億円)三十一・五兆円)以上に上ると推定され、アメリカのGDPの約3%にあたる。(6)

よって利益のことを考えるとなかなかこの構造を解決しようとという流れにはならない。


食料生産はこれからの人口を支えられるのか?

食糧生産で今後も増えていく人口を支えることはできるのだろうか。


肉の需要はこれからも増える

途上国で経済が発展すれば、中流階級が増加する。経済的に余裕が出れば食生活も変わり、肉の需要がさらに増えることになる。

しかし、肉を生産するには大量の飼料を必要とするため、大量の肉を生産するためには、飼料生産のためにとてつもない広さの土地が必要になる。(6)


農業や食料輸送の石油依存

農業部門や輸送は大きく石油に依存している。

トラクターも、収穫機も、灌がい用ポンプも、すべて石油に依存しているし、農家に肥料や農薬を届け、収穫物を市場に運ぶトラックも、列車も、船も、すべて石油が頼りという現状がある。(6)

日本の稲作でも例外なく機械化の恩恵を受けている。1950年代ごろには代かき、田植え、収穫など全てで機械化が進んだ。この流れによって、54年に東京で集団就職が始まって農村から都市部への大規模な人口流出が始まり、三ちゃん農業の形態が増えても機械の効率化によって維持できるようになった。


稲作の歴史:稲作からみた日本の成り立ち

米と日本は深い関わりがあり、単に食料としてだけでなく、経済や文化に大きな影響を与えてきた。そんな稲作と日本の関係性について見ていく。

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石油のおかげで農家は地球上の誰よりも安く穀物や食肉、青果物を生産できるだけでなく、安く速い輸送手段を使い、遠方の買い手にその商品を、買い手の地元の競合相手とほとんど変わらない速さで供給できるようになったが、燃料の使用量も幾何級数的に上昇した。(6)


資源の過剰利用・環境破壊

大量生産によって利用できる食はどんどん多くなったものの、消費しきれず、資源の過剰利用をしているところも増えた。


エネルギーの過剰利用

季節ハズレの果物や野菜栽培で余分にエネルギーを使い、輸送にも余分なエネルギーを必要とする。例えば旬ではないものを育てる時、ビニルハウスなどを用いて保温など、温度を調整し、生育環境を変える必要がある。その際には暖房設備などを使うため、石油などが余分に必要になる。


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炭素排出

過剰な食糧生産は温室効果ガスの過剰排出にもつながる。

毎年の待機中に増える温室効果ガスのトン数は510億トンであり、農業セクターを含むものを育てる分野では年間19%を占めている。

  1. 電気を使う(年間510億トンの27%)
  2. ものをつくる(年間510億トンの31%)
  3. ものを育てる (年間510億トンの19%)
  4. 移動する (年間510億トンの16%)
  5. 冷やしたり温めたりする(年間510億トンの7%)

数字の詳細についてはこちらに書いた。


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また、アメリカ中西部のように、今のところ収穫量を維持できている地域では、その代わりに地下水や川が強力な化学物質によって汚染され、内湾や沿岸水域が魚類の生息できない死の海域となる代償を払わされている。(6)


ゴミとなる食料

さらにこうして生産された食料の多くがゴミとなっていることも問題視される。

2018年には、地球で生産された食物の1/3に当たる13億トン(穀物の30%、乳製品の20%、魚介類の35%、果物と野菜の45%、肉類の20%)がゴミとして捨てられている。(4)


食とテクノロジー

食糧生産において、人口が養える食料を育てていくために、多くのテクノロジーが生まれてきた。

そして今後の未来は、資源の持続性など、地球環境の未来も含めたより良い食糧生産の方法をテクノロジーで解決しようとする動きも出ている。

2021年時点では以下のようなテクノロジーが出てきている。

  • 昆虫食
  • 植物由来の代替肉や卵風味の調味料など
  • 細胞培養
  • 特殊冷凍テクノロジー
  • ドローン、センサーを用いた効率的な農業


食と倫理

食について考える時、倫理的な側面でも歴史上様々な問題があった。


奴隷を使った食料生産

食糧生産において、奴隷などを使って生産させていた例として奴隷貿易があった。

砂糖を大量に作るためにサトウキビを栽培作物として生産し始めたのは中世の時代で、栽培がいっきに拡大したのは一八世紀、つまり奴隷の使用によってプランテーションでの大量生産が可能になった。(1)

中世は砂糖はヨーロッパでは滅多に手に入らない貴重品で、大規模なサトウキビのプランテーションがアメリカに建設され、そこで大量に生産され、ヨーロッパに輸入された。起業家も、ケーキ、クッキー、チョコレート、キャンディー、砂糖に加えて飲むココア、コーヒー、紅茶などを大量に生産した。(7)

需要に答えるため、プランテーションの所有者は奴隷を用いた。16ー19世紀には約1000万人のアフリカ人が奴隷としてアメリカに連れてこられ、7割がサトウキビのプランテーションで働いた。(7)

労働条件は劣悪で、アフリカからアメリカに到着するまでの長旅で命を落とす者も多数いた。(7)

砂糖という当時の贅沢品のために、数多くの生命が失われることとなった。


動物の倫理

動物を殺してその肉を食べるというのは、狩猟採集時代から行われていた。

そして肉を食べることで栄養が取れ、脳が発達し、協力体制ができ、美味しさという喜びを得ることができるなど、人間において肉が重要な役割を果たすようになると、やはりその肉を提供する動物の倫理について考えるのは優先順位的には低かった。(3) 多くの慣習が何千年もの間動物の苦しみに対して完全に無関心だった。(3)

動物の権利を主張する論議が本格的に広まったのは18世紀から19世紀にかけてであった。(3) イギリスでは菜食主義運動が起こり、動物虐待を防止する社会が形成された。(3) 1970年代には書籍などを通じて工場式農場の家畜の様子が明るみに出されることとなる。哲学者のピーター・シンガーが1975年に出版した「動物の解放」は動物権利運動のバイブルともなった。(3)

こうして1975年以降の数十年の間に、西洋文化では動物に対する暴力の非寛容が大いに高まった。(3)

世の中にも非寛容を象徴する動きが見えるようになってくる。

アメリカやイギリスでは菜食主義者が増加し、それにより、菜食主義者向けの商品も食品業界は数多く用意しているし、レストランやスーパーではメインコースで出される肉の情報開示が求められたりもしている。(3)

重要なこととして、大対数の人は動物の扱いを人道的にする法律に賛成している。(3)

今後もこうした流れから、動物に対しても考慮されていくだろうと予想される。


未来の食と食料生産システムの未来は?

今まで見てきたように、食と食糧生産システムに関しては、経済、健康、倫理、地球環境の問題が複雑に絡みあっている。

こうした大きな問題を解決していくには、政府やビジネスの働きかけももちろんだが、市民一人一人が食のシステムと現状を学ぶことが重要だ。

また、こうした全体的な食のシステムの中で、日本はどういう立ち位置でいるのか、どうあるべきなのかという部分も重要になる。


注:
(1) Lieberman. 2014
(2) Smil. 2018
(3) Pinker. 2011
(4) Attali. 2019
(5) Johnson. 2018
(6) Roberts. 2009
(7) Harari. 2018
参照:
Attali, J. (2019). Histoires de l’alimentation: De quoi manger est-il le nom ?.FAYARD.(ジャック・アタリ 『食の歴史――人類はこれまで何を食べてきたのか』 林昌宏訳 プレジデント社)
Harari, Y. (2018). Sapiens: A Brief History of Humankind. Harper Perennial; Reprint edition.(ユヴァル・ノア・ハラリ 『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』 柴田裕之訳 河出書房新社)
Johnson, S. (2018). How We Got To Now: Six Innovations That Made the Modern World. Viking Books for Young Readers. (スティーブン・ジョンソン『世界をつくった6つの革命の物語 真・人類進化史』大田直子訳 朝日新聞出版)
Lieberman, D. (2014). The Story of the Human Body. Adfo Books.(ダニエル・E・リーバーマン 『人体600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病』 塩原通緒訳 早川書房)
Pinker, S. (2011). The better angels of our nature. London: Allen Lane.(スティーブン・ピンカー 『暴力の人類史』 幾島幸子, 塩原通緒訳 青土社)
Roberts, P. (2009). The End of Food. Mariner Books. (ポール・ロバーツ 『食の終焉」 神保哲生訳 ダイヤモンド社)
Smil, V. (2018). Energy and civilization: A history. The MIT Press.(バーツラフ・シュミル 『エネルギーの人類史』 塩原通緒訳 青土社)

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