日本型直接支払制度とは?  地方の農村の機能を維持する

現在松之山黒倉の地域おこし協力隊として、日本型直接支払制度の助成金の事務仕事を行なっている。この助成金はどのような役割をはたしているのか?整理してみた。


日本型直接支払制度とは?

日本型直接支払制度とは、農業の持つ多面的機能(国土の保全、美しい景観の維持、文化の伝承など、農業をすることで多くのプラスの機能がある)を維持する為に、地域活動、農業の活動に対して行われる支援制度。以下の3制度を併せて日本型直接支払制度と呼ぶ。

  1. 多面的機能支払制度
  2. 中山間地域等直接支払制度
  3. 環境保全型農業直接支払制度



農業の持つ多面的機能に関しては下記に詳しく書いた。



なぜ日本型直接支払制度ができたのか?

農林水産省によると、農業・農村は、国土保全、水源かん養、自然環境保全、景観形成等、多くの機能を果たしており、地域の共同活動等によって支えられてきた。しかし農村地域の高齢化や人口減少等により、共同活動が難しくなってきている。そのため農林水産省令の「農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律」に基づいて、農業・農村の多面的機能を維持する活動に支援を行う為、日本型直接支払制度ができた。(1)


法体系ピラミッドは「政令や省令、法令の違いってなに?まとめてわかりやすく解説」を元に作成


社会構造の変化

今まで農村の地域単位で行われてきた道普請(草刈り、道づくりなどの公共事業)、収穫祭などの地域行事、農用地の維持管理なども、以下の理由で難しくなる。

  • 農家以外の会社勤めの増加
    農家と会社員勤めでは、仕事のスケジュールは全く異なる。すると全員で集まって仕事をしたりといったスケジュール調整が格段に難しくなる。
  • 住民の転出
    大学進学で大都市に出て、就職をそのまま大都市で行うために、住民が中山間地域から転出してしまうということは多い。また、高齢化してから、中山間地域の生活が不便になり、都心に引っ越すというパターンもある。
  • 高齢化による労働力の低下
    高齢化のために、労働力が低下していき、以前の集落での役割が果たせなくなる。


中山間地域とは何か 定義と役割

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日本型直接支払制度ができるまでの経緯

農業の有する多面的機能を維持するための日本型直接支払制度ができるまでの経緯としては、1992年の「新しい食料・農業・農村政策」に遡ることができる。食料自給率低下の歯止めや、農業経営者の担い手の確保、環境保全など新たに出てきた課題に対して、対応した新政策「新しい食料・農業・農村政策」が1992年に誕生。2006年には、有機農産物の表示ルールなどを有機JASとして定める有機農業の推進を目指す法律も作成されたり、環境保全農業の位置づけも行われるようになり、環境や農村機能維持に配慮した仕組みが徐々に作られていくようになる。


環境保全型農業とは「農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業」です

環境保全型農業関連情報 - 農林水産省


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1992年新しい食料・農業・農村政策
1999年食料・農業・農村基本法
1999年持続農業法
2007年農地・水・環境保全向上対策
2011年環境保全型農業直接支援対策
2014年日本型直接支払い制度
2015年多面的機能発揮促進法の施行
「日本型直接支払について」を参照


2000年には、中山間地域の厳しい環境で農業をする農家の支援として中山間地域等直接支払が開始される。欧州諸国においては、イギリスでは1940年から、フランスでは1972年から、ドイツでは1974年から条件不利地域への支援として行われている。(2) 2007年より、「農地・水・環境保全向上対策」が開始され、これが現在の「多面的機能支払」になる。目的は農地・農業用水等の保全と質的向上のための共同活動と、化学肥料・農薬の低減など環境保全に向けた活動の支援となる。2011年には「農地・水・環境保全向上対策」から「環境保全型直接支払」が独立し、2014年より日本型直接支払(中山間地域等直接支払、多面的機能支払、環境保全型農業直接払)が始まる。(1)


「日本型直接支払について」を参照


多面的機能支払については下記に詳しく書いた。


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どのくらいの予算があるのか?

では農村機能を維持する為の日本型直接支払制度の予算はどの程度あるのだろうか?令和4年度の国家予算(日本全体の予算)の総額を見てみると、107兆5964億円で、(3)その中で農林水産関係の予算は2兆2777億円になっている。 (4)

そのうち日本型直接支払制度の支払いは以下の通り。(4)

  • 多面的機能支払:487億円
  • 中山間地域等直接支払:261億円
  • 環境保全型農業直接支払:27億円



農林水産関係予算の全体像から日本型直接支払がどこに位置しているのかを見てみると以下のようになる。


令和4年度農林水産関係予算の重点事項を参照



(1)日本型直接支払について
(2)中山間地域等直接支払制度について 農村振興局
(3)令和4年度予算のポイント 
(4)令和4年度農林水産関係予算の重点事項 


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