日本のスキー・スノーボードのフリーライドの今|海外が注目するJAPOW

近年バックカントリーや、非圧雪地帯を滑れる場所が増え、フリーライドスキー・スノーボードを楽しむ人が増えてきている。

フリーライドのシーンは今どのような変化が起きているのか?


インバウンドの増加によってフリーライドがどんどん身近に

北海道や長野、新潟に日本の雪を求めて、インバウンドで欧米豪の地域から多くスキー客が来るようになった。

欧米豪からのスキー客は圧雪されたコースだけでなく、非圧雪エリアも楽しむフリーライドの文化があるため、日本でもそういった需要が増えた。

日本のスキー場では、コースがしっかり区分けされ、自己責任エリアのようなものが少なかったが、こういった需要を受けて非圧雪エリアなども増えてきた。

今後は中国も2022年の北京オリンピックの影響もあり、スキー人口が増える。

現在の中国からのスキーヤーは比較的初心者が多いが、中国のスキーヤーのレベルが高まるにつれ、フリーライドの需要が増え、より身近に非圧雪を楽しめる環境が増えるのではないかと予想される。

しかし、今回のコロナウイルス の影響を受けて、どのような変化がこれからスキー業界に現れるのかは未知数だ。


海外のスキーのインバウンド客は年々増加

では実際スキーのインバウンド客はどれくらい増えているのだろうか。

観光庁資料によると、日本のスキー場は北海道、長野、新潟の三県で45%を占めるとされる。

この三県のインバウンド客の移り変わりを見てみると全ての県でインバウンドスキー客は順調に伸びていることが分かる。


北海道





ニセコ町外国人観光客入れ込み状況の推移。 ニセコ町観光統計(インバウンドの先駆者・ニセコに学ぶ外国人リピーターの作り方より)を元に作成


日本のパウダーブランド、JAPOWとして有名になった北海道。上の図は北海道のスキーの中心地、ニセコ町の外国人観光客入れ込み状況の推移。

2015年までの統計だが右肩上がりに上がっている。


長野

HAKUBA VALLEY訪日外国人スキー来場延べ客数(チケット販売日数ベース) PR TIMESを元に作成


HAKUBA VALLEYは、長野県大町市・白馬村・小谷村にある10のスキー場で構成されるスノーリゾートの名称。

PR TIMESによると、来場国をみると、オセアニアが約半数を占め、次いでアジア、欧州、北米となっている。

欧州、北米からの来場者数が増加した理由としては、海外な有名なスキー場とシーズンパスの提携による、知名度やブランドイメージの向上が挙げられている。


新潟

『楽天トラベル』の「2019年 訪日旅行(インバウンド)人気上昇都道府県ランキング」によると、一位は新潟県だった。

そのうち、「越後湯沢・苗場」エリアが+105.7%(約2.1倍)、「上越・糸魚川・妙高」エリアが+95.8%(約2.0倍)と、スキー需要によって大きく伸びた。(前年同期比)

また、同調査によると、新潟県の2018年の観光入込客数は7,482万8,029人(前年比+3.2%)。

地域別で見ると、湯沢町を含む「魚沼地域」の延べ観光入込客数は1,276万2,588人(同+10.0%)。

同じくスキー需要が高まった妙高市が含まれる「上越地域」の延べ観光入込客数は1,300万3,064人(同+2.4%)。

外国人延べ宿泊者数も40万4,890人(同+28.4%)と大幅に増加しているとのこと。

新潟県観光局によると、なかでも18-19シーズンは、上越市と妙高市にあるスキー場11か所の利用客数において、インバウンド外国人客は前年度より5万4,000人増えて過去最高となる26万6,000人だったという。


なぜ海外からスキー客がくるようになったのか?


ではなぜ日本にわざわざスキー、スノーボードをしにくるようになったのか?

欧米豪の人たちが来る理由として、下記が当てはまるのではないかと思う。

  1. 雪質のよさ。JAPOW
  2. 日本独自の文化
  3. 火付け役、インフルエンサーの存在
  4. 費用面(オーストラリア)
  5. 夏にスキーができる(オーストラリア)
  6. 時差が小さい(オーストラリア)
  7. リピーターと口コミ

こちらについては下記で詳しく書いた。

欧米豪から外国人スキー客が日本に来る理由

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遭難件数の増加


最近外国人の遭難のニュースをちらほら聴くようになった。

  • 「増える遭難 対応迫られるスキー場 半数が外国人 北海道」
  • 「山岳遭難、昨年292件327人 最多に迫る バックカントリー要因 長野」
  • 「新潟)山岳遭難、過去最多の3129人 外国人急増」

遭難のニュースを検索すると、上記のような見出しが並ぶ。海外のスキー場は自己責任エリアが多く、基本的にどこでも滑って良いというスタンスが多い。スキー場側も、非圧雪エリアに対応した安全管理を行っている。が、日本のスキー場はそのようなコースは少なかった。このようなカルチャーのミスマッチによるところは大きい。

「山岳遭難増加」ではなく「通報件数増加」が増えただけなのではないかという見方もある (1)。登山者がスマホを使えるようになったことで、連絡手段が取れるようになったのは大きい。

どちらにしろ、バックカントリーが要因で遭難している外国人が一定数いるのは事実だ。


フリーライドに進出するアジア圏のスキーヤー

今後は中国からも、日本のパウダーを求めて、日本を訪れるという動きが予想される。

2022年の北京オリンピックに向け、国内スキー場800箇所、2025年までにウィンタースポーツの競技人口3億人を目指している(2)。

下記が中国のスキー場の数の推移。


中国のスキー場数 海外スキー市場に関するデータ整理を元に作成


下記は中国のスキー人口推移。(単位は万人)


中国のスキー人口 海外スキー市場に関するデータ整理を元に作成


増え続けるスキーヤー、ボーダーのスキルが高まれば、質の高いパウダーを楽しみたいと思うのは必然だろう。

そうなると、日本のスキー場はフリーライド、非圧雪への対応をせざるをえない状況になる。


日本で増えている非圧雪地帯

非圧雪地帯が楽しめるスキー場も増えてきている。

今後増えていくのではないかとインバウンドのスキーヤーの増加や、フリーライドカルチャーの普及によって、非圧雪地帯が楽しめる場所が増えていくのではないかと予想される。

こちらは長野で非圧雪地帯が楽しめるスキー場。


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そしてこちらは新潟で非圧雪地帯が楽しめるスキー場。


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白馬で開かれたフリーライドの世界大会


白馬では、フリーライドの世界大会、Freeride World Tourも開かれている。

世界からライダーが集まり、メディアでも多く発信されるこの大会によって、白馬はフリーライドの地として、知名度をあげている。

また、新潟や北海道、長野でFWTの予選大会である、Freeride World Qualifierも開催されている。

Freeride World Tourの詳細はこちら。


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FWTが提供するフリーライドプログラム


また、FWTジャパンでは、フリーライドに必要なスキルを教える、「FWTアカデミー」も開催している。

安全に関する知識、パウダーの滑り方、トリックの掛け方など、フリーライドをより楽しむために必要なポイントを教えてくれる。

フリーライドをしっかり教えるための枠組みが日本にも徐々にできてきていると言える。

FWTアカデミー:https://freerideworldtour.jp/academy/


コロナウイルス (Covid-19) の影響


2019年12月8日に武漢で、最初の感染者が見つかり、ここから急拡大したコロナウイルス 。

2020年の1月23日には武漢が閉鎖され、3月11日にはWHOが新型コロナは「パンデミック」と宣言し、4月7日には日本も緊急事態宣言をだした。

こういった影響を受け、日本各地のスキー場も予定より早く閉めるスキー場が出た他、FWQ Freeride Lotte Arai 2* 2020など、フリーライドのイベントも中止となった。

今この文章を書いている5月1日時点では、20−21シーズン、どこまで活発にスキー、スノボに遊びにでかけられるのかはまだ謎だ。

スキーだけにとどまらず、現段階で経済を回すか、安全をとるかのバランスを見極めるのは難しい。


まとめ

インバウンドのスキー客によって、非圧雪地帯の需要が増え、今後もアジア圏からのスキーヤー・スノーボーダーでフリーライドの需要は増えると予想される。

フリーライドの大会も増え、着々と日本にもフリーライドのカルチャーが育まれつつある。

しかし、今回のCovid-19の影響で、20-21シーズンはどこまで影響がでえるかはまだ未知数だ。


フリースキーのまとめ記事はこちらから。


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